VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1342 『Da'at: ginza』(小塚良太/真・女神転生V/NS)

www.youtube.com

アトラスがおくるRPG真・女神転生より、

小塚良太作曲、5の『Da'at: ginza』。千代田区ギンザ付近で流れます。

悪魔が跋扈する世界での人と神の思惑を描く真・女神転生シリーズのナンバリング5作目にあたる本作。都内の高校に通う主人公は、下校時にトンネル崩落事故に巻き込まれ、気付けば砂漠と化した魔界の東京・ダアトに迷い込んだことをきっかけに、救いの手を差し伸べる謎の魔人と融合し、自ら禁忌の力を振るうナホビノとなって熾烈な環境を生き抜くことになる。禍々しく謎めいた世界観、悪魔を会話で説得したり合体させたりするシステム、手強くスリリングな難易度を軸とするシリーズ伝統の要素は健在である。本作では開放感のある広漠なフィールドを舞台に、歯応えのあるバトル、多彩なクエストやスキル習得、細かな収集要素など、順当かつ充実したRPG体験を味わうことができる。戦闘システムはプレスターンバトル(コマンド制で、弱点を突く/突かれるなど条件次第で行動回数が可変する)を採用していて、そこにさらにマガツヒの概念を取り入れている。徐々に溜まるマガツヒゲージを消費すると、行動者ごとに性能の異なる強力なマガツヒスキルを放てるが、味方のみならず敵もマガツヒを集めて危険攻撃を容赦なく放ってくる。そのため、あらかじめしっかりと育成してパーティ構築を練ったうえで、戦闘中も適切な立ち回りを意識する必要がある。現代的な手触りの良さと古典的な手厳しさが隙なく組み合わせられた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは小塚良太氏と小西利樹氏。いずれもアトラスに所属する作曲家である。両名とも真・女神転生シリーズのナンバリング作品には4から参加していて、小塚氏は前作に引き続き本作でもリードコンポーザーを務めている。本作では荘厳なコーラスと重厚なギターを主軸に据えた、物々しさ満点のオルタナやインダストリアル系のサウンドが揃っている。戦闘曲の充実ぶり、クエスト関連の多彩さに加え、探索において東京の都心をモチーフとするエリアが登場することから、各エリアのBGMも豊富に用意されている。全体的には無国籍なサウンドだが、主な舞台が日本であるため、ものによっては和風や仏教音楽を彷彿させる楽曲が存在する。サウンドトラックについては、初回限定盤にミニサントラが付属されたほか、後に5枚組で網羅的に収録したフルサントラが登場した。

千代田区ギンザ付近で流れるのがこの曲である。荒廃しようが銀座である以上は当然建物が多く、高低差の激しい立体的に入り組んだ構造を特徴とする。イントロの時点で、まるで金属同士がぶつかるようなノイジーでアグレッシブな音色が響き渡り、並み外れた威圧感を漂わせる。5秒から入るシンセクワイアは、本来は神秘的で超常的な響きを帯びているはずだが、周囲の喧噪に交じって溶け込むことで、労働歌や咆哮に近いような泥臭さが感じられる。獰猛なギターやドラム、低音中心のピアノなどを巧みに組み合わせてヘヴィな曲調を維持するなかで、2分34秒で流れが変わってふと虚無に立ち返るような、うっかり深淵を覗き込んでしまったような印象を与える。しばらくは緩慢なペース(安心感を覚えられる緩やかさではなく、じわじわと浸蝕される慢性的な不安感がある状態)で進み、再び勢いを取り戻すのはだいぶ先、3分55秒まで待つことになる。何か底知れぬ気迫のある一曲である。

こういう重苦しい感じ、すごく好みです。これと、ボス戦の『Battle -humans, demons, and...-』(同じく小塚さんの作曲)で興が乗ります。あわせてどうぞ。

www.youtube.com