VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1323 『PURE SPIRIT』(海野和子/逆鱗弾/AC)

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タイトーがおくるシューティング・逆鱗弾より、

海野和子作曲、『PURE SPIRIT』。1面で流れます。

東亜プランの元スタッフが携わったことで知られる本作。西暦3195年、ハイブリッド生命体・ギアンディガスが時間跳躍エンジンを奪い、過去から未来までタイムトラベルして人類の歴史を破壊し始めたことを受け、各々事情を抱えた戦士たちが立ち上がることになる。全5面構成で2人同時プレイに対応した縦スクロールシューティングで、ステージごとに時代設定が異なる。自機は3種類、パイロットはおよそ倍いて、選んだ自機によってのみならず、その自機を1P操作にするか2P操作にするかでパイロットが変わる(=面クリア時の台詞が変わる)仕組みである。各キャラの事情は断片的にしか語られず、なかには珍発言をするキャラも交じっているため、シナリオ面は謎めいている。肝心のゲーム性については、8方向レバーにショットとボンバーの2ボタンという平易な操作体系で、パワーアップアイテム、スコア加算アイテム、サブウェポン(レーザー、ミサイル、ナパーム)など一通りオーソドックスな要素が盛り込まれている。敵の配置は概ね素直で、ショットはオート連射可能であるため、全体の難易度は抑えめと言える。やや大味でマイルドな仕上がりとなっている。後にセガサターンPS2に移植されたほか、EGRETⅡ miniに収録された。

本作の音楽を担当するのはkaru.こと海野和子氏と櫻井浩司氏。いずれも当時タイトーサウンドチーム・ZUNTATAに所属していた作曲家である。海野氏が主導で作曲していて、櫻井氏は1曲のみ編曲している。本作では中心となるメインテーマを用意し、他のすべての曲をそのメインテーマから派生したアレンジにする、という手法を取っている。ノスタルジックなスローテンポアレンジ、スタイリッシュなクラブアレンジ、フューチャリスティックなニューエイジアレンジなど、各ステージの時代に合うように工夫が凝らされている。曲を長く聴かせるためなのか、ラスボス戦も含めてボス戦用のBGMが存在せず、道中曲が流れ続ける点が特徴である。サウンドトラックについては、海野氏の担当作品をまとめたアルバム(WELCOME TO THE karu. LAND)に本作の楽曲が収録されているほか、タイトーのレトロシューティングをまとめたコンピ盤にも収録されている。

1面「A.D.3195」で流れるのがこの曲である。くだんの本作のメインテーマであり、これを基に他の道中曲がつくられている。シンセプラック系の弾ける音色で始まり、手拍子を加えてテンポよくリズムを整えていく。7秒頃から徐々にメロディーが入り、あわせて音の周囲を取り巻くようにしてパッドを敷くことで、気持ちの良い浮遊感を生み出す。打楽器が一際強く鳴る19~20秒を境にメインフレーズが始動すると、その旋律はすっと耳に入ってくる魅力があるのと同時に物悲しくやるせない響きを帯びている。後ろでウーアーと歌うコーラスがやるせない感触を強めていて、全体的なリズム感はキレが良くて快活であるのに対し、受ける印象はむしろ感傷的である。53秒頃からクリーンなピアノが奏でられ、伴奏では小刻みに響く煌びやかな音、それとは対照的に伸び伸びと響く緩やかな音を組み合わせることで、バランスよく聴き浸らせてくれる。勢いを取り戻す1分5秒以降になると、感傷的な響きのなかに力強さが窺えるようになり、1分19秒からはさらに洗練された印象を増す。ループ直前の1分32~38秒の間奏は非常に秀逸で、寂寥感のある音色を用いつつ、じわじわとにじり寄ってくるような鋭い使命感をも滲ませている。まとまりよく練られた一曲である。

どのアレンジも素敵なのでいっそ一挙に載せましょう。2面:A.D.1942『回帰』、3面:A.D.1999『UNTITLED SOLDIER』(櫻井さん編曲)、4面:A.D.2373『MIXING BEAT』、5面:A.D.4580『WHATS INSIDE』、順番にどうぞ。

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