VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1322 『血路を開け』(すぎやまこういち/ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち/3DS)

www.youtube.com

スクエニがおくるRPGドラゴンクエストより、

すぎやまこういち作曲、3DS版7の『血路を開け』。通常戦闘で流れます。

ドラゴンクエストシリーズのうち、ナンバリング7作目のリメイク版にあたる本作。たった一つの島しか存在しない世界を舞台に、平和な漁村で暮らしていた主人公は、偶然謎の石板を見つけ、その石板から過去に飛ばされ、それに呼応して現代に新たな陸地が出現したことを受け、石板集めの冒険を始めることになる。大まかな物語の流れやゲーム性は原作を踏襲しているが、グラフィック面では3DS向けにデフォルメ調を維持しつつ立体視に対応したフル3Dとなり、システム面では肝となる石板集めを中心に大幅に見直された。具体的には、石板を探知できるレーダー機能やヒントをくれる案内人が追加されたことで、収集の所要時間や難易度が緩和されてクリアまでの道のりが楽になった。それと並行して転職システムに関わる調整が施され、バランス面では特技の習得条件や仕様が変更され、ビジュアル面では職に応じてキャラの外見が変わるようになった。その他、3DSの2画面を活かしたレイアウトの刷新、シンボルエンカウント制への切替、すれちがい通信を用いた遊びの搭載など、細かな変更点が挙げられる。総じて遊びやすさの改善に注力した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは故・すぎやまこういち氏。おなじみドラクエシリーズサウンドの生みの親である。本作ではPS版原曲音源を東京都交響楽団によるオーケストラ演奏に置き換えた迫力の音源が収録されている。本作の音楽はもとより物語の重さや暗さにあわせて物悲しい雰囲気のものが多かったが、生の楽器を用いることでより繊細な機微が表現されるようになった。一方で、序曲や戦闘曲などの勇ましい楽曲群に関しては、力強い演奏を通じて激しさと凄みが増したように感じられる。サウンドトラックについては、PS版原曲音源、3DS版音源、各種フィルハーモニー演奏盤など、複数種類が発売されている。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。原曲と比較すると、オーケストラ生演奏になったことに加えてテンポが上昇している。出だしから吠え猛るような勢いで奏でられる爆発的なオーケストラの合奏と速弾きストリングスを以って、一瞬にして開戦を告げて最高潮の盛り上がりをみせる。イントロ明け6秒からのバイオリンフレーズは、冒頭の渾身の演奏に比べれば緩やかで落ち着いた気品を纏っているが、依然として勢いは衰え知らずで風を切るような疾走感を帯びている。20秒から笛が素朴で軽快な音色を奏でることで、激しい曲調のなかでもすこし緊張がほぐれるような、あくまで通常戦闘であると実感できるような印象を与える。が、再び畳みかけるようにオーケストラの諸楽器が合奏し、35~37秒でぐっと溜めてからストリングスとブラスが駆けずり回るようになると、軽快さを保ちつつもまたテンションが高まる。特に54秒~1分のフレーズは冒頭の再来とも言える気迫に満ちているし、1分14~17秒の弾け飛ぶようなバイオリンの音色は軽やかだが何か妙な慌ただしさがある。全体としてはヒロイックでエネルギッシュだが、時折そわそわさせられるような一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。ドラクエシリーズの通常戦闘曲だと、たぶん私もこれが一番好みというか耳に刷り込まれてます(PS版原曲のほうですが)。原曲もあわせてどうぞ。

www.youtube.com