VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1296 『はるかなる たびじ』(武内基朗/シャイニング・フォース外伝 遠征・邪神の国へ/GG)

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セガがおくるシミュレーションRPGシャイニングフォースより、

武内基朗作曲、外伝の『はるかなる たびじ』。

第1章の2マップ目をはじめとする複数のマップで流れます。

セガRPG作品群・シャイニングシリーズのうち、第3弾にしてフォースの外伝にあたる本作。ガーディアナ王国を中心とする光の軍勢・シャイニングフォースの活躍により悪の化身が封印されてから20年後を舞台に、友好の使者を偽ってガーディアナ女王を永遠の眠りに就かせる呪いをもたらしたサイプレス王国に立ち向かうべく、少年剣士のニック率いる部隊が遠征することになる。全4章構成、マス目状のマップでユニットを指揮して戦うステージクリア型のシミュレーションRPGである。基本的なゲーム性は前作を踏襲しているが、携帯機向けということもあって一部要素が簡略化されている。具体的には、前作では街への移動や住民との会話といったRPG色の強い要素が含まれていたが、本作ではカットされ、代わりに選択肢のみで戦支度を整えられるキャンプメニューに一本化された。また、上位職へ転職する際に一旦パラメータが下がる仕様が廃止され、気軽に転職できるようになった。物語は本作単体では完結しない続編ありきの内容で、全体的に台詞量もすくないが、携帯機になってもゲームギアの性能を活かした色鮮やかなビジュアルを楽しめる。総じてコンパクトかつ堅実にまとまった仕上がりとなっている。後に次作とセットでメガCDに移植された。

本作の音楽を担当するのは武内基朗氏。主に90年代頃にゲーム音楽に携わっていた作曲家である。シャイニングシリーズに参加するのは本作が初めて、以降も外伝のみならず本編も含めていくつか担当することになる。シリーズおなじみの勇ましさと物悲しさが混ざったサウンドは、携帯機となった本作においても健在で、ゲームギアの素朴なPSG音源の魅力をうまく引き出したメロディアスな楽曲が揃っている。サウンドトラックについては、メガCD版の一部の楽曲をオーケストラアレンジした交響組曲盤が存在するが、全曲収録の原曲音源のものは未発売である。なお、作中には隠しコマンドを入力することで入れるサウンドテスト機能があり、曲名も含めて確認・鑑賞できる。

第1章の2マップ目で初出して以降、最終マップも含めて多くの戦場で汎用的に流れるのがこの曲である。高音を中心にして澄んだ音色を響かせるメロディーが特徴的で、主旋律の裏では軍歌のようにかっちりと打楽器のリズムが刻まれる。メインメロディー単体でもかなり耳に残るが、それと並行して副旋律が終始華やかに響き渡ったり、時折12~16秒などでみられるような滑らかな音階を据えたりすることで、よりいっそう心地良く聴き入らせてくれる。曲前半は美しさのなかに切なさが内包されている印象を与えるが、32秒以降で流れが変わると、切なさに代わって明るさが感じられるようになる。似通ったフレーズを音程を上げながら繰り返していくうちに、56秒で冒頭のメロディーに回帰するが、回帰するといっても音程の違いや伴奏の組み合わせの影響でだいぶ響きが異なる。1分4秒からしばらくは、もはや戦闘中ではなく勝利の凱旋をしているかのごとく高らかな盛り上がりをみせる。曲に耳を傾けるとおのずと前途に光明を見出せる気がしてくる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。メガCD版はオーケストラ仕立ての壮大なアレンジで、音源の豪華さでいえば進化してますが、これは原曲の時点ですでに最良の形で完成している印象を受けます。あわせてどうぞ。

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