VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1295 『Nebula』(田島賢・山本健誌/Excite Truck/Wii)

www.youtube.com

任天堂とMonster Gamesがおくるレーシングアクション・Excite Truckより、

田島賢・山本健誌作曲、『Nebula』(仮称)。

コース「Nebula」(国内版では「クリスタル」)で流れます。

ファミコンのレースゲーム・エキサイトバイクの後継作として、アメリカのMonster Gamesが開発を手がけた本作。世界各国のコースを舞台に、優勝目指してクルマを爆走させることになる。横持ちのWiiリモコンをハンドルに見立て、ボタン入力でアクセルやブレーキ等、リモコンの傾きでステアリングを切るという操作方法を用いている。モードは主に3つあり、メインコンテンツのエキサイトレース、1対1のローカル対戦ができるVS対戦、特定条件下でのクリアを目指すチャレンジ。レースは単純な着順で勝敗が決まるのではなく、派手にジャンプしたりライバル車に体当たりしたりするなど、各種スタントを披露することでポイントが付与され、順位得点とも組み合わせてポイントの合計を競うルールを採用している。特筆すべきは道中で専用のアイテムを拾うとコース自体に影響が及ぶ点で、加点要素となるジャンプ台やリングが出現するほか、落石が起きたり地面が水没したりといった大胆な変化を楽しむことができる。モードやコースの種類は限られているが、独自の痛快さが感じられる仕上がりとなっている。なお、北米ではWiiのローンチタイトルとして発売され、国内では遅れて「エキサイトトラック」という題名で登場した。

本作の音楽を担当するのは田島賢氏と山本健誌氏。いずれも任天堂に所属する作曲家である。大元となるエキサイトバイクの作曲にこそ参加していないが、両名ともキャリアの長いベテランである。続編のエキサイト猛マシンでも引き続き携わることになる。本作では危険運転必至な過激なゲーム性に沿うように、エレキギターを軸とした激しいロックやプログレ系のサウンドが揃っている。また、これらデフォルトで用意されている楽曲群のほかに、本作ではmp3ファイルの入ったSDカードをWii本体に差し込むことで、レース中のBGMを自分好みにカスタマイズできるオプションが存在する。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

コース「Nebula」(国内版では「クリスタル」)で流れるのがこの曲である。最難関であるダイヤモンドカップ唯一のコースで、他のコースは実在の国をモチーフとしているが、ここだけ星雲が広がる謎の空間を舞台としている。実質的なラストステージを彩るにあたって、本作の楽曲の例に漏れず重く激しいエレキギターを主軸に据えつつ、シンセパッドやクワイアを積極的に取り入れることで壮大なムードを醸し出している。冒頭しばらくは非常にけたたましい勢いがあるが、37秒頃で勢いを抑える代わりに特徴的なフレーズを奏でると、流れが変わったことで反射的にその音色に意識を向かせるような効果をもたらす。46秒からはピアノやクワイアの美しい音色を交えて幻想的な空気を漂わせるが、だからといってギターやドラムの荒い音色が鳴りを潜めることもなく、美しさと荒さが共存している。幻想的と一口に言っても必ずしも綺麗で煌びやかな印象を伴っているわけではなく、たとえば1分22秒からのパートはかなり歪んで濁った音色を出しているが、それでもなお超常的な神秘を感じさせる。威圧的であると同時に恍惚な響きを持つ一曲である。

思わず怯んでしまいそうなほど恐ろしい雰囲気があるけど、聴き入りたくなる魅力がありますね。