VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1321 『STAGE 3』(多和田吏/怒りの要塞/GB)

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K.K.DCEがおくるアクション・怒りの要塞より、

多和田吏作曲、『STAGE 3』(仮称)。3面で流れます。

探索アクションと軽いシューティング要素を備えた怒りの要塞シリーズの1作目にあたる本作。強力な秘密兵器が研究されているという敵の巨大要塞を破壊すべく、敏腕工作員の男女・マサトとミズキが内部に侵入することになる。全4面構成で見下ろし型・固定画面切り替え式のアクションゲームで、性能の異なる2人の主人公を適宜使い分けながら、迷路のように入り組んだギミック満載のステージ群を攻略していく。敵味方ともに攻撃は主に遠距離の銃火器を用いるうえに、弾数の概念があるため、アクションシューティングに近いゲーム性を持つ。マサトは攻撃重視の性能で、動きが遅い代わりに彼のみが扱える多彩な特殊武器がある一方で、ミズキは機動力重視で、素早く移動できるうえに彼女専用の動作としてジャンプ(罠を飛び越えるのに重宝する)を繰り出せる。道中には回復や強化など様々なアイテムがあり、全体的にリソースに余裕がある。自動復活できる薬をストックできるほか、片方の主人公がやられてももう片方が薬を調達すれば復活させられるため、ハードボイルド風の世界観とは裏腹にカジュアルな難易度に調整されている。また、通信ケーブルを介した2P同時プレイに対応している。総じてさくっと遊べるコンパクトな仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは多和田吏氏。スタッフロールではHONEY TAWADA名義でクレジットされている。当時、本作の発売元であるジャレコに所属していた作曲家である。ぜんぶで3作ある怒りの要塞シリーズでは本作のみ作曲に参加していて、以降の作品では同じくジャレコ所属の鈴木康行氏にバトンを渡すことになる。本作ではミリタリー系の作風に沿った重く仰々しいものから、ボス戦や後半のステージ曲でみられるアップテンポなものまで、良質な楽曲が揃っている。作中にはサウンドテストが搭載されていて、曲名は番号表記のみの簡潔なものだが、曲にあわせた簡易なアニメーションがついたり、任意の順番で曲を連続再生できるプレイリストのような機能が存在したりするなど、音楽に対する凝り様が窺える。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

STAGE 3「CAVE」で流れるのがこの曲である。地下洞窟を舞台とするステージで、真っ暗なエリアがあったり危険なトゲ床やコンベアが配置されていたりする。そうした剣呑な雰囲気に反して、どちらかというとゲーム後半の折り返し地点というイメージに寄り添う形で、この曲は冒頭から気持ち良い疾走感を帯びている。リズミカルに鳴る音色とパンチの利いたパーカッションの組み合わせで、イントロの時点で十分に気力を奮い立たせてくれるような勢いがある。そこにさらに13秒から本格的に主旋律が入り、非常に甲高く清々しい音色を響かせると、ますます前へ進みたくなる気持ちを後押しする。とりわけ24~25秒で一旦流れを止めてからぐっと音階を駆け上がるさまは見事で、後続のメロディーは小刻みに音を震わせるトレモロを取り入れながら鮮やかに駆け抜けていく。その後まもなく42秒あたりで1ループが終了する。激しくモチベーションを掻き立ててくれる一曲である。

このメロディーセンス、痺れますね。格好良くて大好きです。