高萩英樹作曲、『幻影無情』。舞台一「亡侠街」で流れます。
タイトーの50周年記念作品としてGacktを主演に迎えた本作。月から放射された核の雨により文明が瓦解し、西暦から代わって己の技のみを頼れる技暦の時代を舞台に、武を極めし男・劉王羽(ラウ・ウォング)は、人ならざる鬼と化した友を止めるべく戦うことになる。主演の存在感と武侠映画×トンデモSFの作風が特徴的な3Dアクションで、ステージクリア制で全7舞台+最終ボス戦を攻略していく。ワイヤーワークによる滑空や壁走り、二本の剣による華麗な剣戟と流れるようなカウンター、妖術による遠隔攻撃やバフなど、多彩かつ見目鮮やかなアクションが用意されている。難易度は初期2つ、クリア後に2つ追加される仕組みで、基本的には高難度を売りにしたつくりではないが、終盤のステージでは相応の技量を要する。世界観やキャラは独特だが作中では物語描写や台詞数がすくなく、絵面や動作と相まって奇異荒唐な雰囲気が漂っている。総じてケレン味の効いた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは河本圭代氏と高萩英樹氏。いずれも当時タイトーに所属していた作曲家で、河本氏はTAMAYO名義、高萩氏はDr.Haggy名義でよく知られる。このうち河本氏は本作のムービーBGM担当、高萩氏はインゲームBGM担当である。本作では二胡や笙などのアジア楽器に、スピーディーなエレキギターやシンセ、パワフルなオーケストラを巧みに絡み合わせることで、伝統的でありながら前衛的でもある中華テクノ系のサウンドを揃えている。ムービーBGMは劇伴らしく間や緩急を利かせていて、要所要所で銅鑼の重厚な音色を取り入れるなどしてムードを盛り上げてくれる。サウンドトラックについては、CD盤のほかデジタル配信版も存在する。
舞台一「亡侠街」で流れるのがこの曲である。夜の香港をモチーフにしたステージで、廃墟と化してなお妖しく光るネオンや密集した建物が残る。アンビエントなイントロから始まり、5秒から笛子の豊かな音色が入ると一気に中華っぽさが強まる。このときはまだ静かだが、17秒からにわかにアクセル全開でギターとドラムが参戦するようになり、瞬く間にロッキンな勢いを帯びていく。流麗なメロディーとエッジの効いた伴奏が見事に融け合うことで、神秘的かつ刺激的な昂揚感を生み出している。1分40秒過ぎで流れが変わってしばらく溜めた後、大きな見せ場が三つ待ち構える。一つは2分7秒からの二胡の演奏で、その美しい音色は古きを偲ぶような尊い響きがある。一つは後続の笛子の調べで、2分36秒から激しい伴奏を伴いながら鮮やかに高音を吹き鳴らす。一つは3分16秒から満を持して設けられるギターの独壇場で、先の二胡や笛子に並ぶ主役級の活躍を披露する。さらに曲終盤に至ると、4分14秒あたりで派手な銅鑼を打ち鳴らして最後の盛り上がりをみせる。なかでも5分9秒以降は二胡も笛子もギターもシンセも何もかもが冠絶した迫力を放つ。比類なき鮮烈さを誇る一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。スタッフロールで『幻影無情 ~清風明月mix~』というアレンジが流れるので、本作のメインテーマみたいな立ち位置ですね。あわせてどうぞ。