VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1216 『ウロカバネ -虚屍-』(坂本英樹/討鬼伝 極/PSP・PSV)

www.youtube.com

コーエーテクモがおくる和風ハンティングアクション討鬼伝より、

坂本英樹作曲、極の『ウロカバネ -虚屍-』。ウロカバネ戦で流れます。

和の世界観と部位破壊に焦点を当てた狩りゲー・討鬼伝のアッパーバージョンにあたる本作。前作(無印)の戦いから三月後を舞台に、北から現れた未知の鬼の襲撃を受けたウタカタの里で、各地より集った鬼を討つモノノフたちがそれぞれの思惑を胸に戦うことになる。無印の内容を丸ごと収録したうえで、新たな物語、キャラ、武器、討伐対象の大型鬼など、多数の追加要素を盛り込んでいる。基本的なゲームサイクルやシステムはそのまま踏襲されているが、全体的に敵味方ともにAIがブラッシュアップされ、より緊張感と共闘感が増した。仲間と協力して鬼の身体部位を一撃で複数同時に切断する「鬼千切・極」という新アクションの追加や、緊急任務をはじめとする高難度の特殊任務の導入、100名以上も増えたミタマ(日本史上の英雄の魂で、武具に装着すると恩恵を得られる)など、各方面で遊びの幅やボリュームが順当に強化されている。総じて無印から倍増したといえるほど中身が詰まった仕上がりとなっている。後にPS4とSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは坂本英樹氏。音楽制作会社ノイジークロークの代表である。討鬼伝シリーズ通して携わっている作曲家で、無印に引き続き作曲も編曲も手がけている。本作はアッパーバージョンという性質上、無印から流用されている楽曲は多いが、ボリューム増に伴う本作初出の追加曲もすくなくない。和風オーケストラの路線を継承し、物語のクライマックスに向けてより深く核心に迫るような濃密なサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、本作初出の曲をまとめて収録したものが発売されている。

ウロカバネ戦で流れるのがこの曲である。禍々しい漆黒の巨躯を誇る本作初登場の大型鬼で、クエヤマという既出の鬼によく似た姿や行動パターンを持つ。コントラバスの威圧的なリズムパターンで始まり、物々しげな効果音や打楽器を交えながら盛り上げていくさまは、クエヤマ戦の『クエヤマ -崩山-』に通ずるところがある。全体的に曲調や旋律が似せてつくられているため、アレンジかオマージュと言えるが、クエヤマ戦の曲調はミステリアスで無国籍な印象があるのに対して、この曲はどことなく中東風で、そこに能管を思わせる和楽器を取り入れている。25~40秒は透き通るような高音を、42秒以降はやや低めな音程を響かせて、音色そのものはとても美しいが、どうも落ち着かないような空気を漂わせる。弦楽器の重厚さはさることながら、打楽器の迫力が恐ろしく、主旋律の裏でドコドコと激しく打ち鳴らされる様子はまさに鬼気迫る勢いがある。1分16~37秒のような抑圧的な間奏部分においても打楽器の見せ場があり、曲を通して狩猟の雰囲気づくりに大きく貢献している。非常に殺伐とした一曲である。

弦や打楽器の押さえつけるような重さに対する、笛の舞うような軽さがいいですね。『クエヤマ -崩山-』もあわせてどうぞ。あと毛色は異なりますが、笛が印象深いという点でもう一曲、『昔歳抄』も素敵なのでぜひお聴きください。

www.youtube.com

www.youtube.com