TYPE-O作曲、『Voyage』。船旅の際に流れます。
ゲームギア向けの本格RPGとして登場した本作。かつて暗黒神アーリマンと蛇王ザッハークと戦って一度は滅びるも再興を果たしたシャダム王国を舞台に、主人公の王子は、隣国から来訪するマリアム王女を迎える当日に、蛇王に連なるユフラート帝国の急襲を受け、それをきっかけにして運命を揺るがす冒険に出ることになる。アラビアンナイト風の世界観が特徴の全5章構成のコマンド選択式RPGで、戦闘は素早さ順でターンが回ってくる。独特な色艶のあるグラフィックはもちろん、登場人物や呪文（パーティメンバーの一人である魔人のみが使えるコマンドで、レベルアップではなく各地の碑文を読むことで習得できる）等も含めて、全体的にアラブ世界の雰囲気を重視している。また、オートセーブを採用しているなど、舞台設定も機能面も当時としては一風変わっている。一方で、遊び心地や物語の流れはオーソドックスで、独自色を出しつつも手堅くまとまった仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのはTYPE-O氏。情報がすくないため素性は判然としないが、単独でサウンド欄にクレジットされている。本作の音楽はアラブらしさをよく捉えた、魔法のようなエキゾチックな響きのある楽曲が揃っている。総曲数が充実しているほか、複数の楽曲にメインテーマのフレーズを散りばめるといった手法が見受けられる。楽曲のほかにサウンド面で特筆すべき点といえば、本作では一部ボイスが入っていて、瞬間移動呪文の「アイアイサー！」や敵のやられ声など、なかなか印象に残る使われ方がされている。サウンドトラックは未発売だが、作中に曲名込みのサウンドテストが存在する。
1章の旅立ちのシーンや2章の甲板で過ごすシーンなど、船旅の際に流れるのがこの曲である。メインテーマのアレンジの一つで、原曲は長めのイントロや緻密なビートなどいろいろ添えられているが、この曲はシンプルかつストレートに肝となるメロディーの良さを引き出している。冒頭から綺麗に響く高音を駆使して美しいサビを奏で、10秒や20秒などでメインテーマでもおなじみの華やかなトリルを披露する。ベースや打楽器の密度が薄まっている点を除くと基本的にメインテーマと旋律は共通しているが、伴奏が簡素になったことで相対的に主旋律の存在感が増し、持ち前の魅力が強調されている。特に31～33秒や40～42秒、49～51秒などでは、メインメロディーの後を追うように裏メロが奏でられ、非常に豊かで味わい深い印象を与える。聴きやすい旋律で旅情をそそる一曲である。
メインテーマはメインテーマらしく格好良さ重視な感じですね。大元のフレーズは同じでもだいぶ聴いた感触が異なります。『Main Theme』、あわせてどうぞ。
