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#786 『途轍なき道』(山下康介/信長の野望・天道/PC)

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コーエーがおくる歴史シミュレーション・信長の野望より、

山下康介作曲、天道の『途轍なき道』。織田家のテーマとして流れます。

戦国の世で天下統一を目指す信長の野望シリーズのうち、13作目にあたる本作。基本的なゲーム性は前作を踏襲しているが、従来の国盗りシステムに代わり、シリーズ初となる集落システムが導入され、街道の敷設を軸とした内政が重視されるようになった。敵城を陥落せずとも街道を繋ぐことで周辺の領地を支配・奪取することが可能で、領地を先に削って敵の弱体化を狙うか、手っ取り早く城を攻め落とす強硬策に出るか、その判断が戦況を変えていく。技術の獲得や街づくりといった、前作で複雑に入り組んでいた部分は簡略化されたほか、新たに追加された群雄覇権モード(全国ではなく地方統一がゴール)により、短時間で気軽に楽しめる要素も完備されていて、シリーズ未経験者にも親しみやすい仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは山下康介氏。映画やドラマの劇伴作曲で活躍する作曲家で、ゲーム音楽方面では信長の野望シリーズおなじみの作曲家として、7作目の将星録から単独で作曲している。本作を最後にシリーズの作曲を離れることになるが、その有終の美を飾るかのごとく、本作の楽曲はいずれも力作揃いのオーケストラサウンドに仕上がっている。前作では大名の勢力に応じて2曲(別アレンジ)が用意されていたが、本作は大名ごとのテーマ曲は一本化され、1曲を長く聴くスタイルへと変更された。サウンドトラックについては、他4作品とともに一部の楽曲を厳選して収録した至上音盤と、本作含めシリーズの楽曲を隈なく収録した30周年記念CD-BOXが存在する。

織田家のテーマ曲として、内政などをおこなうメイン画面で流れるのがこの曲である。バイオリンによる閑雅なイントロから始まり、ハープのまろやかな音色を伴いながら徐々に勢いを増していくと、19秒から一気にオーケストラが本格始動し、躍動感たっぷりに勇壮なアンサンブルを紡ぐ。40秒からは主旋律を笛にバトンタッチし、一旦は伴奏に専念するストリングスだが、サビがやってくる1分10秒頃には再び主役に返り咲き、いっそう力強く美しい音色を奏でる。曲名にある「途轍」とは筋道や道理を意味する単語(「とてつもない」という表現で馴染み深いが、その「とてつ」の漢字表記である)で、筋道を外れてでも突き進む織田家の覇道を、劇的な昂揚感に満ちた旋律とともに表現している。

天道のコンセプトは「道」だそうですが、そのコンセプトを曲名にまで浸透させていることから、個人的にはこの曲が本作のメインテーマだと思っています。