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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1476 『金色の雷鳴』(中野香梨/GetsuFumaDen: Undying Moon/NS)

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コナミがおくる浮世絵風ローグライク剣戟アクション・GetsuFumaDenより、

中野香梨作曲、『金色の雷鳴』。月嵐童との戦いの前半戦で流れます。

ファミコンの和風アクション・月風魔伝の約35年越しの続編であり、株式会社ぐるぐるとの共同開発によるインディー作品として登場した本作。前作より千年後、復活した龍骨鬼によって再び魔境と化した地獄にて、月氏一族の二十七代目当主が異変の元凶を断つべく旅立つことになる。前作は横スクロールアクションにRPGや3Dダンジョンを組み合わせたゲーム性を特徴とするが、本作では装いを新たにローグライクハクスラを軸に据えている。2Dのステージクリア形式で主武器と副武器に分けて刀や戦傘などの多彩な得物を駆使し、道中で資源を集めて自機や武器を強化しながら進めていく。特筆すべきは美しくもおどろおどろしい浮世絵風のグラフィックで、雰囲気に見合うように難易度は高めに設定されている。具体的には雑魚含めて敵の火力が高く、ボスの動きが苛烈で、負ければ資源を没収されるため、しっかりと自分の立ち回りや相手の行動パターンを意識して挑む必要がある。その一方で、自機の永続的な強化が可能だったり、被弾せずに敵に攻撃を当て続けると鬼人化してしばらく攻撃力が上昇したりするなど、やり込むうちに活路を見出しやすくなる。全体的に資源の種類が多く、攻撃エフェクトが大仰で、育成面や視認性に煩雑さがあるが、濃厚でシビアな和の世界観に浸れる仕上がりとなっている。後に一週遅れてSteamにも登場した。

本作の音楽を担当するのは中野香梨氏、西原鶴真氏、宝野聡史氏。中野氏はコナミに所属する作曲家で、宝野氏は主にアニメの劇伴作曲の分野で活動する作編曲家である。西原氏は薩摩琵琶の奏者であり、本作では琵琶の弾き語りがある一部の楽曲において中野氏と共同で作曲している。本作では日本の伝統芸能をイメージした雅やかで昂揚感あふれるサウンドが揃っていて、琵琶はもちろん、三味線や尺八、和太鼓を象徴的に取り入れている。そこにさらにエレキギターやストリングスオーケストラ、グリッチノイズなどを織り交ぜることで、純和風にとらわれず時代を超越した独自の作風を生み出している。また、前作からのアレンジ曲も存在する。サウンドトラックは効果音や環境音を含めて2枚組で収録されている。

月嵐童との戦いの前半戦で流れるのがこの曲である。主人公の兄であり、月氏一族の歴代最高の実力者ながら消息を絶っていたが、物語終盤にて相対することになる。前半戦でこの曲が流れた後、後半戦では本シリーズを代表する『行け!月風魔』が流れるため、この戦闘がいかに物語上重要な立ち位置かが窺える。雷鳴の如き効果音とピアノによる流麗かつ怒涛のイントロで始まり、4秒頃からシンセとコーラスが独特なアンサンブルを披露することで徐々にテンションを高めていく。似通ったフレーズを反復するなかでも、21秒以降でオーケストラヒットや電子音を強調して焦燥感を強めたり、37秒以降でストリングスや神楽鈴を用いて重厚な演奏をみせたりして、絶えず盛り上がり続ける。とりわけ印象深いのは53秒過ぎからのフレーズで、シンセの派手な高音とともに、クラシカルなピアノ協奏曲を彷彿させる繊細で表現力豊かな旋律を奏でる。さらに進んで1分28秒頃になると三味線が加わるようになり、同じ旋律をなぞるストリングスの音色を下敷きにして華やかなハーモニーを紡ぐ。三味線とストリングスが抜けた後はピアノとシンセが跡を継ぎ、そして1分52秒にはオーケストラヒットや神楽鈴も含めて楽器を総動員して最大の山場を迎える。恐るべき威圧感を誇る一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。ちなみに曲名の「金色」はキンイロではなくコンジキです。後半戦で流れる本作アレンジの『行け!月風魔』(編曲は中野さんと宝野さんによる)と、あと個人的にイチ押しな双天鬼戦の『双怒双涙』(作曲は宝野さんによる)もあわせてどうぞ。

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