VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1477 『マ石合成』(嶋倉一朗/オリエンタルブルー -青の天外-/GBA)

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ハドソンがおくるRPG・オリエンタルブルーより、

嶋倉一朗作曲、『マ石合成』(仮称)。マ石合成の際に流れます。

上記動画の1:39から3:20まで。

架空の和風国家ジパングでの大冒険を描く天外魔境シリーズの外伝にあたる本作。天帝のもとで人間や鬼族など多くの種族が住まう青の大地を舞台に、天帝亡き後に台頭し始めたマものによって都が危機に晒されるなか、救世の鍵となる古文書を持つ主人公が旅立つことになる。東洋ファンタジーの幻想的な世界観を特徴とするフリーシナリオ形式のRPGで、物語の大まかな流れは存在するが、どの順番でどこに向かって誰を仲間にするか、取った行動によってどう分岐するかはプレイヤー次第である。一方を仲間にすればもう一方が仲間にならなかったり、一方を救えばもう一方が救えなかったり、選んだ選択肢によってキャラの命運や世界の情勢が左右されるし、重要な戦闘は勝っても負けても進行する点が特徴である。攻略の自由度と並んで印象的なのがマ石システムで、マ石とは一般的なRPGにおける魔法に該当するものだが習得の制約がない消耗品である。石同士を合成して新たなマ石を作り出せるほか、装備と融合させて性能を強化したり特殊効果を付与したりすることができる。総じて独特な情緒と冒険感を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは嶋倉一朗氏。当時ハドソンに所属していた作曲家である。天外魔境シリーズの作曲を手がけるのは本作が初めてだが、ZEROでミュージックデザインを、第四の黙示録で効果音を担当したことがあるため、シリーズには馴染みがある。本作ではGBAの素朴で美しい音源を駆使した叙情的なサウンドが揃っている。ハープやフルートを彷彿させる音色でしっとりと哀愁を漂わせるもの、派手で力強いオーケストラ風の音色の組み合わせで重厚な印象を与えるもの、癖になるリズム感で魅せてくれるもの、和や中華の響きが感じられるものなど、場面ごとにマッチするように楽曲が豊富に用意されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

マ石合成の際に流れるのがこの曲である。マ石合成とは専用のマシンを用いて、正方形のパネル上に八つある窪みに原石を配置して新たなマ石を生成するシステムで、入手したレシピに則って生成する以外にも、自力でパターンを見つけ出すことができる。ちょっとしたミニゲームのような手軽さと奥深さがあり、合成の最中にこの曲が流れることで乙な雰囲気を漂わせている。リズミカルな低音と澄んだ笛の高音の組み合わせが相性抜群で、全体的に小気味良い曲調ながらも民族音楽に通ずるような郷愁と哀愁を感じさせる。24秒(上記動画の2:03)過ぎで笛とハーモニーを成すように低音の旋律が紡がれると、ますますディープでシックな印象が強まっていく。作中においてマ石は万物のエネルギーの源であり、合成を通じてまるで森羅万象に思いを馳せているかのような気分に浸らせてくれる。幽遠の趣がある一曲である。

なんとも素敵で、ずっと聴いていたくなる類の曲ですね。