峰岸透作曲、トワイライトプリンセスの『忘れられた里』。忘れられた里で流れます。
ゼルダの伝説シリーズ20周年の節目に、ゲームキューブ最後の作品かつWiiのローンチタイトルとして登場した本作。ハイラル王国最南端のトアル村で静かに暮らしていたリンクは、影の世界の侵攻により村を襲撃され、気付けば狼に変身して迷い込んでしまった異世界・トワイライトで、謎の魔物・ミドナと出会い、ともにハイラルの命運を賭けた戦いに身を投じることになる。時オカやムジュラの系譜を継ぐリアル路線のアクションアドベンチャーで、GC版・Wii版ともにアクション、グラフィック、ボリュームともに圧倒的なスケール感を誇る。狼リンクや馬上戦、Wii版では直感的なリモコン操作などの新要素もあり、意欲的でありながらシリーズ作品として極めて王道かつ正統な進化を遂げた傑作に仕上がっている。後にWiiU向けにHD移植された。
本作の音楽を担当するのは太田(現姓は早崎)あすか氏、近藤浩治氏、峰岸透氏。いずれも任天堂に所属する作曲家で、近藤氏はおなじみゼルダサウンドの生みの親、太田氏は4つの剣+以降、峰岸氏はムジュラ以降のシリーズに参加している。このうち峰岸氏はメインコンポーザーとしてフィールド曲とダンジョン曲のすべてを手がけていて、今まで以上にシリアスでダークな作風に沿った、特定のジャンルに囚われないメランコリックでメロディアスな良曲を数多く書き下ろしている。サウンドトラックは長らく未発売だったが、HD移植に際して大半の楽曲を収録したものが登場した。
忘れられた里は物語の終盤になってようやく訪れることができる、オルディン地方に位置するシーカー族の隠れ里で、魔物に占領されて久しく、残る住民は老婆ただ一人、という寂れた場所である。そこで流れるこの曲は、ビヨンビヨンという特徴的な音色を発する口琴と、透き通るような荒涼感を漂わせる口笛のイントロから始まる。イントロが明け、アコースティックギターが入ると、さながら西部劇の一幕のような哀愁と緊迫を印象付ける。風が吹きすさび、魔物たちの仕業で無造作に荒れ果てた寂寥感あふれる里にふさわしい、侘しくも力強い一曲である。
里の入り口の傾いた看板、住民の代わりに魔物や猫がのさばる街並み……元々こういう曲調は好物ですが、見た目と曲の雰囲気がぴったりですごく没入感がありますね。