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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1549 『Looming Dread』(中島健太郎/バイオハザード RE:2/PS4・XOne・PC)

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カプコンがおくるサバイバルホラーバイオハザードより、

中島健太郎作曲、RE:2の『Looming Dread』。The 4th Survivor(ハンク編)で流れます。

バイオハザードシリーズのナンバリング2作目のフルリメイクにあたる本作。1998年9月、ラクーンシティにやってきた新人警官・レオンと、音信不通の兄(前作主人公)を捜す女子大生・クレアは、未曽有の生物災害に巻き込まれることになる。物語の大筋やダブル主人公制は踏襲しているが、リメイクにあたって従来の固定カメラ視点から三人称視点に変更され、操作性が一新された。グラフィックは大幅に向上し、キャラモデルやマップのつくり込みはもちろん、敵対するゾンビの恐ろしさや動きの生々しさも強化されている。原作の隠しモードであるThe 4th Survivorとそのマイナーチェンジ版のThe 豆腐 Survivorは本作でも健在で、原作同様に限られた物資を駆使して極限状態からの脱出を目指すスリルを味わえる。そのほか、難易度の追加、タイラントの常時徘徊、原作にあったザッピングシステムの廃止など、各方面で新規要素と仕様調整とオミット部分が点在している。総じてバランスよく原作を昇華させた傑作に仕上がっている。後にPS5、Xbox X|S、スイッチに移植された。

本作の音楽を担当するのは内山修作氏、大木優拓氏、小倉真奈氏、康貞蘭氏、土屋裕一氏、中島健太郎氏、中山翔太郎氏、藤澤鯛介氏、牧野忠義氏。康氏と中島氏は当時、大木氏、小倉氏、中山氏、藤沢氏は現在もカプコンに所属している作曲家である。内山氏と牧野氏はかつてカプコンに在籍していた経験があるフリーランスで、土屋氏は音楽制作会社INSPIONに所属する作曲家である。かなりの大所帯だが、このうち内山氏、牧野氏、康氏の三名がメインで作曲していて、中島氏は本作のサウンドディレクターを務めている。他五名はそれぞれ1曲のみの担当に留まっている。原作と比べて曲の大部分が刷新されているが、まったくの別物ではなく再構築に近い出来でまとめられている。原作でも携わっていた内山氏を中心に一部の楽曲のアレンジも含まれる。サウンドトラックには主題歌も含めて収録されている。

The 4th Survivorで流れるのがこの曲である。アンブレラ特殊工作員のハンクを操作してクリーチャーだらけの建物からの脱出を目指す、通称ハンク編と呼ばれるタイムアタック形式のモードである。孤立無援、絶体絶命の状況を彩るにあたって、出だしから前のめりなビートを打ち鳴らして心拍数を上げてくる。12秒で不穏な重低音が響くようになり、22秒でいよいよ曲が動き出すと、すぐさま強襲するようにストリングスが押し寄せる。似たり寄ったりの音域で短い間隔で執拗に音色を奏でることで、休む暇もなく常に最大の危機感を煽ってくる。怒涛の演奏を通じて恐怖が迫る感覚がじかに伝わってくるが、それと同時に一種英雄的とも言える力強さに満ちている。特に42秒から一際パワフルな打音を取り入れて、反復の多い曲調のなかでも顕著な起伏を感じさせる。見方を変えればむしろプレイヤー自身が周囲に恐怖をもたらしているようであり、どんな過酷な状況下でも必ず生きて帰る、人呼んで死神のハンクらしい威容が感じ取れる。1分19~27秒で十分に溜めてから発散することで、核となるメロディーそのものにはそう変化がないのに確実に盛り上がるメリハリをつけている。貪欲で獰猛な一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。原作のハンク編では上田雅美さん作曲で前後半に分けて『Fearful is no word for it』『Maximize your survival instinct』というパニック感強めの曲が使われています。RE:4のTHE MERCENARIESでは原作とRE:2の曲のマッシュアップみたいなアレンジがあり、そちらもあわせてどうぞ。

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