VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1578 『wind ride kids』(細江慎治/サイバーサイクルズ/AC)

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ナムコがおくるバイクレーシング・サイバーサイクルズより、

細江慎治作曲、『wind ride kids』。コース「NEO YOKOHAMA」で選べるBGMの一つ。

レースゲームのなかでも特に近未来を舞台にバイクに焦点を当てた本作。ハンドルにアクセルとブレーキの付いたバイク型の大型筐体にまたがって、初級と上級の2つのコースに挑むことになる。車種は旋回性に優れた扱いやすい電動バイク・アンティアス、高出力でバランス重視のレーサータイプ・NVR750R、扱いにくいが最速のポテンシャルを秘めたドリフトマシン・ワイルドホッグがあり、さらに隠しマシンとしてペンギン(文字通り動物のペンギン)と超上級のカスタムバイクが用意されている。特筆すべきは当時としては先駆的だった通信機能で、隣の筐体と連動して最大4人までローカル対戦することができる。通常の運転操作の他に視点切替機能があり、好みに応じて主観視点、後ろ乗り視点、三人称視点のいずれかを選べる。マシンそのものの見た目や挙動はもちろんのこと、マシンごとにライダーの姿や仕草が異なるため、視点切替とあわせていろいろ試す楽しみがある。総じて手軽にクールな気分に浸れる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは相原隆行氏、佐宗綾子氏、佐野信義氏、細江慎治氏、三角由里氏。いずれも当時ナムコに所属していた作曲家である。このうち佐宗氏と当時新人だった三角氏が中心となって作曲していて、他三名はゲスト扱いで各々1曲のみの担当に留まっている。本作ではシンセを駆使した豪快なロックナンバーが揃っていて、特別にサイバー感を強調しているわけではないがギターの効いたスピーディーな楽曲群を堪能することができる。コース数は2つと限られているがそれぞれ3曲ずつ選べる仕組みで、さらにはペンギン用のお茶目な専用曲も入れると計8曲の個性的なコースBGMが存在する。サウンドトラックには未使用曲やゲームオーバーのジングルも含めて収録されている。

上級コース「NEO YOKOHAMA」で選べるBGMの一つがこの曲である。場所は近未来の横浜、時間帯は夜で、高層ビルに囲まれた高速道路をしばらく走った後、中華街を通ってぐるりと回りながら全長7.8kmを駆け抜けていく。出だしからエレキギターとオルガンを派手に組み合わせて悪魔的とも言えるダークでシリアスで挑発的な印象を植え付け、5秒頃から執拗にうねりながら吼えて混沌と喧騒の様相を呈する。11秒で風向きが変わって今度はオルガンが執拗にやかましく鳴り渡り、それが過ぎると26秒からはダークな雰囲気は霧散して一気にアクセル全開のパワフルなロックに転身する。以降は勢いに乗ってハイテンションな盛り上がりをみせ続け、1分23~37秒で間奏を挟んだ後に再度ギアを入れ直して怒涛の演奏を披露する。惚れ惚れするほど疲れ知らずで、夜の都を人馬一体となって飛ばす快感が音を通じて伝わってくる。エキセントリックなスピード感に満ちた一曲である。

横浜のこのあたりは今でこそみなとみらいが充実してますが、95年当時はあまり再開発が進んでなくて、それを基に近未来化したからか、このコースには汎用的な高層ビルは多くあってもシンボリックな景観は映ってないですね。あらためて見返すと不思議な新鮮味があります。