VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1045 『刻まれる時』(細江慎治/FolksSoul −失われた伝承−/PS3)

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ゲームリパブリックがおくるアクションアドベンチャーFolksSoulより、

細江慎治作曲、『刻まれる時』。無限回廊で流れます。

PS3初期の作品にあたる本作。死別したはずの母から手紙を受け取った女性・エレンと、面識のない女性から助けを求める不可解な電話を受け取ったオカルト雑誌記者の男性・キーツは、死者に会えるという言い伝えが残る辺境の村に辿り着き、生死をめぐる謎に巻き込まれることになる。ダークファンタジー調の重厚な世界観のもと、二人の主人公を操作し、現世と七つの異界を行き来して真相に迫っていくアクションアドベンチャーである。特筆すべきはコントローラのモーションセンサーを活かした独自操作で、さながら釣り竿のように前後左右に傾けて、異界に潜む妖精・フォークスの魂を吸引することができる。吸引したフォークスを使役することで、攻撃したり特殊な技を発動したりといったアクションが可能になる。その他、サブ要素としてネットワーク経由でダンジョンを制作・公開できるダンジョントライアルモードなども存在する。独特な宗教観と死生観とが滲む仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは川井憲次氏、齋藤博人氏、佐宗綾子氏、細江慎治氏、向島ゆり子氏。川井氏はアニメや映画の劇伴などで活躍する作曲家で、ゲーム方面ではサンサーラナーガシリーズなどを担当した経験がある。齋藤氏はかつて工画堂スタジオに在籍していた、現在フリーランスの作曲家である。細江氏と佐宗氏は音楽制作会社スーパースィープ所属の作曲家である。向島氏は作曲家兼バイオリン・ヴィオラ奏者で、本作でも作曲と演奏の双方を手がけている。本作の退廃的な作風を彩るにあたって、ときに不気味で、ときに華やかな、悲壮感あふれるオーケストラサウンドが揃っている。アイリッシュフルートや民謡なども取り入れることで、本作の雰囲気づくりに大きく寄与している。サウンドトラックは主題歌を除き収録されている。

無限回廊で流れるのがこの曲である。異界の一つで、人々が思い描く死後に対する問いや悩みが具現化した迷路のような場所である。時計の存在が攻略するうえで重要な役割を担うだけあって、時鐘や針の音をふんだんに用いたスピリチュアルな響きが特徴である。カウベルアゴゴベル(金属製の打楽器)を思わせる独特な金属音が、恐ろしくも惹かれるような不吉な好奇心をそそる。30秒あたりから忍び寄るように伴奏が存在感を強めると、神秘的とも薄気味悪いとも言える不思議な妖しさを漂わせる。1分10秒以降は音程が微妙に外れているような、何か軋んでいるような音を奏で、さらに1分40秒からは後ろのほうで妙に切羽詰まった打楽器が響き渡ることで、ますます混沌が深まっていく。闇路に引きずり込まれるような没入感に満ちた一曲である。

12曲まとめていただいたリクエストの第8弾です。フォークスソウルといえば、以前にもレムリック村の曲を紹介しましたね。

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