VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#799 『Warning Valley』(細江慎治/Prismatic Solid/X360)

www.youtube.com

YO1 KOMORIがおくるアブストラクトシューティング・Prismatic Solidより、

細江慎治作曲、『Warning Valley』。1面道中で流れます。

個人でゲーム制作をしているYO1 KOMORI氏によるダウンロード専用インディーシューティングとして登場した本作。プリミティブな形状とソリッドな質感から成る抽象的な空間を駆け巡るオーソドックスな縦スクロールシューティングで、虹色に輝く弾幕の大海をくぐり抜けていく。ステージは5面+エクストラの全6面構成、ショットはホーミングやシャワーなど計6種類用意されていて、自機を支援する3種のオプションや広範囲を薙ぎ払うスウィープを駆使してアーティスティックなフォーメーションを組むことになる。全体的にスタンダードなつくりながらも、周回するたびに難易度が上昇して敵の配置が変化するなど、細部までこだわり抜いた仕上がりとなっている。後にPS4にも移植された。

本作の音楽を担当するのは佐宗綾子氏と細江慎治氏。いずれも音楽制作会社スーパースィープに所属する作曲家で、このうち細江氏はYO1 KOMORI氏の作品には本作以前にもPRODIGY RACING(同作はスーパースィープにとって設立後初の担当作と思われる)で作曲した経験があるなど、古くから付き合いがある。本作では音楽が大きな目玉要素として扱われていて、SamplingMastersの名義で知られる両氏ならではの珠玉のハードコア・テクノサウンドが取り揃えられている。サウンドトラックはゲーム未使用のフレーズも含んだフルバージョンの楽曲を収録したものが発売されている。

ゲーム開始直後の1面「RIDGE」は、ゴツゴツした山肌と画面を覆い尽くすほどの煌びやかな火の粉が特徴的なステージだが、その道中で流れるのがこの曲である。ストイックなリズムとシャープなビートが紡ぐ高純度のミニマルテクノナンバーで、見目鮮やかな弾幕が視覚を、押し寄せる音の波が聴覚を刺激する。27秒あたりから挿入される、歌声ではないが、歌声に似た印象を与える不思議な機械音声が、曲全体を貫くエレクトロニックなヴァイブに磨きをかけ、聴けば聴くほど恍惚感で満たしてくれる。開始早々、トランス状態に近い没入感を生み出してくれる一曲である。

音に酔い痴れる感じが心地良くて、周回プレイへの意欲も高めてくれるような気がします。