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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#800 『久遠 ~光と波の記憶~』(江口貴勅・松枝賀子/ファイナルファンタジーX-2/PS2)

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スクウェアがおくるRPGファイナルファンタジーより、

江口貴勅・松枝賀子作曲、10-2の『久遠 ~光と波の記憶~』。

オープニングデモで流れます。

スクウェアが手がけるファイナルファンタジーシリーズのうち、初のナンバリング続編タイトルにしてエニックス合併前の最後の作品として登場した本作。ユウナたちの活躍によって脅威だったシンが滅亡した後の世界を舞台に、消えてしまったティーダの面影を追って再び冒険に出ることになる。戦闘システムは前作のカウントタイムバトルから一転、従来通りリアルタイムで進行するアクティブタイムバトルに回帰しているほか、続編という性質上、最初から飛空艇を所有していて、シナリオの進捗状況(ストーリーレベル)に応じて世界各地でミッションが発生する仕組みとなっている。世界観や根底となる物語こそ受け継いでいるが、全体的にコメディタッチで戦闘もその他のシステムまわりも大きく異なるなど、続編でありながらかなり実験的な仕上がりとなっている。後に北米版をもとに再構成したインターナショナル版や、PS3・4・Vita・PC・スイッチ・XboxOne向けにHDリマスター版が発売された。

本作の音楽を担当するのは江口貴勅氏と松枝賀子氏。江口氏は音楽制作会社リバース所属の作曲家で、松枝氏は当時スクウェアに在籍していた作曲家である。両名ともシリーズに携わるのは本作が現時点で最初で最後で、今までFFサウンドにこの人ありとされてきた植松伸夫氏が本作でシリーズ初の不参加になるなど、シリーズ中でも異例の作曲体制である。その影響もあってか、ファンファーレをはじめとするおなじみのテーマが不在、音楽の方向性もエクスペリメンタル要素あり、などと色物揃いの楽曲構成となっている。サウンドトラックはオリジナル版やインターナショナル版、各種ピアノコレクションなど複数枚発売されている。

オープニングデモや一部のイベントで流れるのがこの曲である。全体的に音楽の雰囲気ががらっと変わったなかでも、ことこの曲に関しては、前作において同じ立ち位置にある『ザナルカンドにて』を意識して踏襲したかのような美しいピアノ曲に仕上がっている。温かくも切ないピアノの旋律に、時折星の瞬きを彷彿させるような電子音が響き渡り、ストリングスの伴奏が柔らかく寄り添うことで、そこはかとなく幻想的で、とめどなく郷愁を誘うようなノスタルジックな響きを生み出している。永遠と聴いていられるような、そして聴けば聴くほど奥ゆかしさが増していくような、そんな魔術的な魅力に満ちた一曲である。

グアドサラムで条件を満たすと流れるアレンジの『久遠 ~楽団員さんの演奏~』は、原曲の美しさと楽団での演奏ならではの賑やかさが共存していて、素敵な編曲ですね。あわせてお聴きください。

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