スクウェアがおくるドラマチックシミュレーションRPG・フロントミッションより、
FUJIO KENJI・HIDENORI NAGAOKA・RIYO NISHIKIDA・RYOUE TAKAGI作曲、
ザ・ファーストの『Black Hounds』。
U.S.N.編のブラックハウンド隊のフェイズで流れます。
人型機動兵器ヴァンツァーを駆って過酷な戦場を生き延びるフロントミッションシリーズの1作目のPS移植版にあたる本作。地下資源をめぐって紛争が絶えないハフマン島を舞台に、オシアナ共同連合(O.C.U.)とニューコンチネント合衆国(U.S.N.)の双方の主人公の視点から参戦することになる。原作のSFC版で描かれたO.C.U.サイドの物語に加え、移植に際してU.S.N.サイドの新主人公ケビンを軸とした裏の物語が追加収録されている。これにより重厚なシナリオにいっそう深みと苦みが加わり、やや難易度高めなつくりと相まって独自の存在感を放っている。また、グラフィックの向上やデザインの変更、装備の追加やバランス調整など広範にわたってオーバーホールされている。そのほか、戦闘デモをカットできる簡略戦闘機能が新たに搭載された一方で、原作にあった武器紹介が削られている。総じて原作を活かしてブラッシュアップされた仕上がりとなっている。後にPS版ベースでDSに再移植され、さらにスイッチ、PS4、PS5、Xbox One、X|S向けにリメイクされた。
本作の音楽を担当するのはFUJIO KENJI氏、HIDENORI NAGAOKA氏、RIYO NISHIKIDA氏、RYOUE TAKAGI(高木了慧)氏。スタッフロールでは原則アルファベットで、全体的に情報が限られていて漢字表記が不明な人物もすくなくない。高木氏に関しては当時、本作の開発元のトーセに所属していた作曲家であると判明していることから、残りもおそらくトーセないしは共同開発元のウインズのスタッフと推測される。本作の新曲はU.S.N.編の5曲のみだが、原作の楽曲が移植に際してPS音源の水準に合わせた忠実なアレンジが施されている。新曲・既存アレンジいずれも下陽村子氏と松枝賀子氏がつくり上げた音楽性を踏襲してメリハリのあるオーケストラサウンドを生み出している。サウンドトラックについては単体では未発売だが、4のサントラにボーナスディスクとして本作の楽曲群が2枚組で収録されている。
U.S.N.編のブラックハウンド隊のフェイズで流れるのがこの曲である。ブラックハウンド隊はU.S.N.の特殊部隊で、物語前半においてはケビンが所属するプレイヤーフェイズに該当するが、後半では代わってエネミーフェイズに回る。そうしたなか、冒頭から神秘と焦燥が絡み合ったクワイアを響かせることで、実態が掴みにくい謎めいた組織というイメージを見事に表現している。7秒からは徐々に低音でうねりながら周期的に鐘を鳴らしてプレッシャーを高めていき、14秒以降は一気に躍動的なメロディーを披露するようになる。目まぐるしくリズミカルな勢いがあるなかで、伴奏は引き続き厳粛かつミステリアスな雰囲気を保っている。とりわけ48秒あたりでストリングスを強調するパートには独特なテンションがあり、時折ギュインと遠鳴りする音色と合わせて隙のないストイックな展開をみせ続ける。ループ手前、1分19~22秒でにわかに収束してまるで心電図の音のように静かにピッと余韻を残した後、あらためて再始動する。痺れる格好良さがある一曲である。
これはすごく好きな曲です、流れた途端にゾーンに入る感じがします。リメイク版のデジロックアレンジ(編曲はAleksander Jastrzębskiさん)も歯応えありますね。あわせてどうぞ。