VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1009 『Katai deth』(細江慎治/iS internal section/PS)

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ポジトロンスクウェアがおくるシューティング・イズより、

細江慎治作曲、『Katai deth』。3面で流れます。

ビデオドラッグ(画像と音響の効果でトリップしたような陶酔感を味わえる作品)を題材にした3Dシューティングにあたる本作。全8面構成、さながら万華鏡のようなサイケデリックなグラフィックで彩られたチューブ状のステージを攻略することになる。音楽に合わせて背景が激しく明滅する演出が特徴で、視覚に刺激を与えることに特化したゲームデザインとなっている。ショットは十二支モチーフで12種類あり、それぞれ性質や威力、スコア倍率などが異なる。CD差し替え機能によってゲーム中に流れるBGMを手持ちの音源に変えることもでき、差し替えられたBGMの曲調に応じて画面が明滅する(敵の配置やステージ尺等は変化しない)。シューティングとしての出来よりも映像表現に注力した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは佐宗綾子氏と細江慎治氏。当時アリカに所属していた作曲家である。このうち細江氏がメインで作曲していて、佐宗氏は3曲のみの担当となっている。本作では先鋭的な作風を支える目玉要素として、両氏が得意とするハードなテクノナンバーを取り揃えられていて、全編にわたってリズム重視のソリッドな音使いを堪能できる。サウンドトラックには未使用のアウトテイク版なども含めて収録されている。

3面で流れるのがこの曲である。背景は紫で、橙や緑や青の図形が奥から手前へと絶え間なく押し寄せてくるが、その様子を起伏の乏しいミニマルなイントロで淡々と彩る。肝となるフレーズを反復しつつ、12秒から、24秒から、36秒からと定まった間隔でメロディーや楽器の構成などが変化していく。続く48秒ではイントロから続いていたフレーズこそ途絶えるが、勢いたっぷりに解放的なサビが奏でられる。サビが収束する1分12秒で聴き覚えのあるフレーズが戻ってくると、すでに1ループが完結したかと思わせるようなリズムが紡がれる。が、1分36秒から今まで以上に激しめな音が響き、1分48秒でさらに電子的な色味を強めて、初めて聴くフレーズが挿入される。2分36秒まで鮮やかな盛り上がりを見せた後、最終的にループに入る3分まで、さながら電子音が早口言葉を唱えているかのような独特な音を奏でる。アップテンポで中毒性あふれる魅力に満ちた一曲である。

カタイ……デス? どういう意味でしょうね、この曲名。よくわからないけどとても好きです。