VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1388 『刹撃 ‐通常戦闘テーマ‐』(江口孝宏/残月の鎖宮 -Labyrinth of Zangetsu-/NS・PS4)

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アクワイアがおくる3DダンジョンRPG・残月の鎖宮より、

江口孝宏作曲、『刹撃 ‐通常戦闘テーマ‐』。通常戦闘で流れます。

アクワイア製の新作ダンジョンRPGとして登場した本作。滅びの墨に侵食された世界を舞台に、適性のある生存者で結成された墨滅者たちが、大地を浄化すべく危険な鎖宮に立ち入ることになる。あえて彩度を抑えた白黒の水墨画のような和風ビジュアルと、トレハン要素を含むストイックなWizライクなゲーム性が特徴である。6つの人種・3つの性格(厳密には道徳軸のアラインメント)・侍や魔術士など9つの職道を掛け合わせて自分好みにキャラを育成していく。自動セーブ付き&全滅時のやり直し可能な通常モードと、自動セーブなし&全滅地点に死体が残り、別動隊で救助して蘇生に成功しないとキャラロストに繋がる上級モードがある。戦闘は最大6人編成で前衛・後衛の概念があるターン制コマンドバトルで、変わった点といえばHPが0になっても必ずしも死亡状態にならず、さらに致命傷を負う前に回復すれば戦線復帰できる。また、墨の穢れという最大HPを蝕む状態異常があり、どんどん蓄積するうえに寺院に戻って浄化しない限り永続する厄介な効果を持つ。骨太で言葉少なで非常に古典的だが、オートマップ機能や戦闘の高速化など、現代水準の快適さも味わえる。小ぢんまりとしつつ程よく味のある仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは江口孝宏氏。音楽制作会社スーパースィープに所属する作曲家である。本作では中世日本の時代劇に近しい世界観を軸に据えつつ、魔法やエルフ、ドワーフのような西洋古典ファンタジーのエッセンスも取り入れている。そうした作風に寄り添うように、音楽は和楽器を大々的にフィーチャーしつつ、ピアノやストリングス、各種オーケストラ楽器などを織り交ぜた重厚で風光明媚なサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、初回購入特典として一部楽曲を厳選収録したものが付属されているほか、DLC追加曲も含む全曲収録のものも発売されている。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。冒頭第一音で鋭く甲高い能管のヒシギを吹き放ち、そこにジャラジャラ掻き鳴らす三味線、野太く響く尺八、分厚く躍動するストリングスを相次いで加えることで、瞬く間に戦闘のテンションを最高潮に引き上げる。24秒で一時的に高く神々しい笙を鳴らし、29秒からは対照的に低く唸るように尺八を鳴らし、33~34秒でさらさらとさざめくフレーズを配置することで、バランスよく引き締まった印象を与える。終始、曲冒頭の爆発的な勢いが保たれるなかでも、46秒からストリングスがますます激しく切羽詰まった演奏を披露したり、繰り返しを経た後に1分55秒以降でオーケストラ&三味線を強調した新パートが加わったりするなど、勢いを保つだけでなくいっそう強める工夫が凝らされている。染み付いて拭えないような強烈な和の衝動がある一曲である。

刹撃というのは作中でいうクリティカルヒットのことです。まさに会心の一曲ですね。