VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#991 『不浄な白い鳥』(MIssionary/Arcaea/iOS・And)

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lowiro limitedがおくる超感覚リズムゲーム・Arcaeaより、

MIssionary作曲、『不浄な白い鳥』。英題は『Impure Bird』で、収録曲の一つ。

イギリスの少人数デベロッパー・lowiro limitedの代表作にあたる本作。崩壊した世界を舞台に、記憶喪失の二人の少女・光と対立は、失われた世界の記憶を内包する硝片・アーケアをめぐって世界の在り方と生き方を問うことになる。基本プレイ無料、有償で追加楽曲を解禁するタイプの音ゲーで、奥から手前に押し寄せるノーツをリズムに合わせて処理していくなかで、判定ラインが画面下部と中央で二つあることからノーツに高低差があるのが特徴である。とりわけ上下左右に自由に動くアークノートは、移動に合わせて指をスライドさせる必要があり、立体的な操作感ならではの奥深さを生みつつ、譜面の難易度を調整する役割を担っている。複雑で幻想的なシナリオが紡ぐ独特な世界観とそれを支える演出、歯応えのあるゲーム性とが融合した仕上がりとなっている。後にスイッチに移植された。

本作では現在までに200を超える楽曲が収録されている。参加しているアーティストは日本出身の割合が多いが、日本に加えて韓国や台湾などのアジア圏、アメリカなどの欧米圏も含まれる。また、BMS界隈で馴染み深いコンポーザーが多く参戦していて、アーティスト数だけでも100以上にのぼる。それに比例する形で楽曲のバラエティも充実していて、世界観に見合った透明感のあるファンタジー調から、EDMやハードコア、ボーカル入りまで幅広いジャンルが各種揃っている。楽曲提供者の一人であるMIssionary氏は香港出身のフリーランスの作曲家で、本作のほかにDynamixやRAVONなど、主に音ゲーの分野で活躍している。サウンドトラックは本作オリジナルのものを中心に現時点で3種類発売されている。

2017年7月配信のver.1.1.3の有料追加曲がこの曲である。静かなピアノイントロからクラブミュージック風の曲調へと変身するノリの良さが印象的である。ピアノの洒落た旋律とアグレッシブなスネアが勢いよく響き、そこに電子的な色味を帯びたストリングスが加わることで、独特な爽快感を生み出す。40秒過ぎには、鳥の囀りと呼ぶにはあまりに合成音声に近いが、それ以外に表しようのない効果音が入り、間奏をメリハリ豊かに彩る。その後、再度イントロ並みの静けさに回帰するも、ラストにかけて勢いを盛り返して凄まじい密度で音が駆け抜けていく。最後はまたピアノと囀りによる絶妙に無機的なアウトロで有終の美を飾る。譜面は曲の展開通り、終盤に難所が集中していて、譜面と曲調とのシンクロ感が心地良い一曲である。

鳥の囀り、いいですよね。