光栄がおくるリコエイションゲーム・維新の嵐より、
菅野よう子作曲、『オープニング』(『龍馬』とも)。オープニングで流れます。
上記動画の1:46から。
光栄独自のジャンルであるリコエイションゲームの第1弾として登場した本作。幕末を舞台に、佐幕・公議・尊王のいずれかの立場から日本が進むべき未来を模索することになる。坂本龍馬や西郷隆盛、勝海舟など、プレイヤーは史実上の人物を選択し、相手を説得することで日本全国の思想統一を果たしていく。メインとなる佐幕・公議・尊王の国体思想に加え、開国・攘夷に二分された国外思想や、要人同士の信頼関係を説得の材料に用いることになり、必ずしも穏便に交渉する必要はなく、敵対する雄藩を武力征伐したり、江戸城を攻撃して最終的に武力倒幕を実現したりすることも可能で、思うがままに幕末の歴史を追体験ないしは改変することができる。シミュレーションゲームの枠に留まらぬ独創的な自由度の高さを持つ仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは菅野よう子(洋子)氏と山本光男氏。いずれも90年代前後の光栄製の作品ではおなじみの作曲家で、菅野氏は三國志や信長の野望・全国版を、山本氏は後に菅野氏との共作で信長の野望・戦国群雄伝などを手がけている。本作では幕末の動乱期を表現するにあたって、ときに穏やかに、ときに激しく、独特な重みと厚みのあるサウンドが勢揃いしている。サウンドトラックについては、アレンジが施されたサウンドウェア版、PC88の移植音源を収録した光栄オリジナルBGM集などが存在し、両者の間で曲名の表記が異なる(今回は後者に倣っている)。なお、現在に至るまでPC98の原曲は音源化されていない。
本作のオープニングとして、坂本龍馬をはじめとするキャラ紹介のシーンで流れるのがこの曲である。オープニングに入る前に、まず無音で時代背景を語るテキストが表示され、次に軍歌の『宮さん宮さん』とともに人々が行進する様子が淡々と挿入され、最後にようやくこの曲が流れ出す(上記動画の0秒から再生すると一連の流れを確認できる)。飄々とした軍歌の曲調からは一転、ずんと響く低音に、滑らかに音階を行き来するアルペジオの伴奏が、落ち着き払った主旋律を重厚に彩る。激しさはないが、じわじわとうねるような、陰謀渦巻く幕末らしい荘厳さがあり、幕末の行く末がプレイヤーの手にゆだねられることの重大さを知らしめてくれる。オープニングにふさわしい、静かだが確かな昂揚感に満ちた一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。サウンドウェア版には菅野さんのセルフアレンジで、『龍馬』という曲名で豪華な管弦楽の編曲がなされています。すこしテンポがあがっているほか、追加パートも充実していて、旋律の美しさが際立つような、悲愴感の強いアレンジです。あわせてどうぞ。