VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1364 『戦闘コマンド』(大島ミチル/蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史/MCD)

www.youtube.com

光栄がおくる歴史シミュレーション・蒼き狼と白き牝鹿より、

大島ミチル作曲、メガCD版の元朝秘史の『戦闘コマンド』。

戦闘画面で流れます。上記動画の18:21から20:07まで。

13世紀前後のモンゴル史を扱う蒼き狼と白き牝鹿シリーズのうち、3作目のメガCD向けの移植版にあたる本作。ユーラシア大陸を舞台に、プレイヤーは君主となって大陸全土の統一を目指すことになる。1184年開始で若きテムジンと周囲の部族の活躍を描く「モンゴル高原の統一」、1206年開始でチンギス・ハーンの全盛期を描く「チンギス・ハーンの雄飛」、1271年開始でフビライの時代を描く「元朝の成立」、1185年開始で偉人たちが一堂に会する「世界帝国への道」の4本の既存シナリオに加え、移植に際して新シナリオとして1180年開始で日本を舞台とする「源平の争乱」が登場した。選択した文化圏によって異なる物語、経済や産業の発展、地域独自の兵種など、世界の広大さと地域色を感じ取れる要素が充実している。シリーズおなじみのオルド(妃を侍らせて世継ぎを設ける要素)はビジュアル面・システム面ともに前作から強化された。相手の好みや機嫌を考慮して世辞や贈物など適切な駆け引きをおこなう必要があるほか、移植版では音声入りの台詞が発せられる点が印象深い。戦闘は2Dのサイドビュー視点で、遠征させた軍団が敵と接触すると、コマンド式で部隊を指揮して戦うシーンに突入する。細かなゲームバランスはやや大味なところがあるが、歴史と文化を自ら目の当たりにする感覚を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは大島ミチル氏。映画やアニメの劇伴などを幅広く手がける作曲家である。蒼き狼と白き牝鹿シリーズには本作が初参戦だが、光栄製の作品という括りで言うと本作の直前に太閤立志伝での作曲経験がある。本作では文化圏による差異を強調しているため、戦略や行軍、オルド画面では大まかな地域ごとに楽曲が用意されている。また、PC98原作から多数の機種に移植されていることから、機種ごとに音源の違いがある。サウンドトラックについては、インゲーム音源を収録したものはスーファミのみヨーロッパ戦線とセットで発売されたことがあるほか、モンゴル楽器など本場の音を取り入れてアレンジを施したサウンドウェア盤が存在する(ここではスーファミ版の曲名に倣うものとする)。

戦闘画面で流れるのがこの曲である。前述の通り、戦略や行軍画面などは地域別の曲がかかるが、戦闘でかかるものは全地域で同一である。あえて分けないことで争いごとは万国共通であると暗示しているかのようである。冒頭からギラギラと煌めくように金属質のアルペジオを奏でて勢いよく先陣を切り、続けて7秒頃(上記動画の18:28)からラッパのような音色を鳴らして徐々に盛り上げる。20秒(18:41)あたりでアルペジオが再度合流すると、戦場を駆ける疾走感と戦場に賭ける使命感が絡み合って、非常に聴き応えのある響きを生み出す。20~26秒(18:41~47)で激しく、27~29秒(18:48~50)で抑えて、30~56秒(18:51~19:17)で再び激しく、57秒~1分10秒(19:18~31)で再び抑えて、と交互にフレーズを配置することで耳に残りやすい印象を形作っている。戦の場面を彩るにふさわしい逞しさを誇る一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。サウンドウェア盤だと『馬上の狼』という曲名で、ピアノや胡弓を用いてだいぶ重めに、初めは遅く徐々に勢いづいて優美に締める特徴的なアレンジが施されています。あわせてどうぞ。

www.youtube.com