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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#302 『風のフォルトーネ』(土屋暁/ユーディーのアトリエ ~グラムナートの錬金術士~/PS2)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

土屋暁作曲、ユーディーの『風のフォルトーネ』。ワールドマップで流れます。

錬金術士の波乱万丈な日常を描くアトリエシリーズのうち、4作目にあたる本作。1作目から3作目までのザールブルグ編を終え、舞台をグラムナート地方に移した。調合の失敗により200年後の未来に飛ばされたユーディット・フォルトーネを主人公に、ひょんなきっかけで背負い込んでしまった多額の借金を返済しつつ、様々な都市を巡りながら過去へと戻る手立てを探していくことになる。本作から品質や特性といったアイテムの効力が調合で遺伝するようになったほか、時間制限なしのマルチエンディング制が採用されるなど、今なお受け継がれる要素が搭載された。新章開幕にふさわしく、システム面の大きな転換を図った仕上がりとなっている。後にPSPに移植された。

本作の音楽を担当するのは土屋暁氏、小林美代子氏、小林正幸氏。当時ガストに所属していたか現在もしている作曲家で、このうち直近のリリーで作曲を務めた土屋氏と小林女史のペアが中心となって曲づくりをおこなっている。土屋氏はアトリエシリーズにはエリー(A2)以降イリス1作目(A6)まで作曲に携わっている。本作では土屋氏がフィールド曲や戦闘曲を、小林女史がキャラクターのテーマ曲をそれぞれ主に手がけていて、冒険というテーマにあわせて、新天地での生活を彩る賑やかで明るい楽曲が多い。サウンドトラックはオリジナル盤のほか、PSP用の追加曲(同じくガストの阿知波大輔氏による)も収録したものが存在する。

グラムナートのワールドマップにて流れるのがこの曲である。右も左も分からないままに200年後の世界へと飛ばされたユーディーの心情に寄り添うようなノスタルジックな曲調が特徴である。寂寞とした雰囲気を漂わせる笛の音に、温かみのあるアコースティックギターやシャンシャンとリズミカルに鳴るタンバリンを添えることで、過去への限りない郷愁を誘う。30秒あたりからストリングスが、45秒あたりからアコーディオンの出番が与えられ、見知らぬ土地での遥かな冒険に対する、期待と不安が入り混じった繊細な感覚が表現される。1分20秒手前で新たなパートが挿入されると、いっそう身が引き締まるような緊張と寂寥の念が感じ取れる。そうして2分20秒頃で一連の旋律が終息していくと、その余韻に浸るかのようにギターソロが奏でられ、静謐さの末にループに向けて再始動する。たっぷりの情緒を纏った一曲である。

曲名からもなんとなく素朴な寂寥感が伝わってきますね。