VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1112 『静寂ナル咆哮』(増子津可燦/モナーク/Monark/NS・PS4)

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フリューがおくるRPGモナークより、

増子津可燦作曲、『静寂ナル咆哮』。傲慢のマップにおける通常戦闘で流れます。

フリューの完全新作として女神転生のスタッフを起用してランカースが開発した本作。謎の結界に覆われて外界から孤立した新御門学園を舞台に、記憶喪失の主人公はエゴの力で異能を操る契約者となり、学園内の異変に立ち向かうことになる。狂気や欲望といったテーマを扱った暗澹としつつ軽妙さもある世界観が特徴で、それぞれ異なる事情を持つ4人のバディと組んで敵対する契約者と戦い、分岐要素のあるシナリオを進めていく。戦闘は移動や位置取りを伴うシミュレーション風のターン制コマンドバトルで、権能(スキル)を使うたびに発狂度が蓄積し、発狂状態に陥ると制御不能になり、やがて自滅する。一方で、威力が発狂度依存の権能がある、覚醒状態という別の状態と組み合わせればステータスが超強化されるなど、ハイリスクハイリターンな駆け引きを楽しめる。また、共感という主人公専用の能力があり、味方と権能や状態変化を良いものも悪いものも共有できるため、いかに有利に働くよう使いこなすかが肝となる。ややスローテンポかつ手ごわくも大味なバランスで、3Dグラフィックも簡素だが、アクの強い作風と巧妙な物語が魅力的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは増子津可燦氏。主題歌や挿入歌などはKAMITSUBAKI RECORD(ネット発の新進気鋭の音楽レーベル)が手がけている。増子氏は初期の女神転生シリーズに携わっていたベテランの作曲家で、フリュー製の作品には本作以前にもカリギュラシリーズをはじめいくつか参加している。本作では独特な歪みを孕んだ世界観を彩るにあたって、ゴシック系の荘厳なサウンドを中心に据えつつ、学園モノらしい軽快な日常曲も存在する。また、戦闘マップは主に七つの大罪に対応する形で複数種類あり、マップごとに異なる通常戦闘曲が用意されている。そのうえ、ボス戦では個別のボーカル曲が流れるなど、戦闘曲まわりがかなり充実している。サウンドトラックについては、早期購入特典として一部楽曲を収録したものが付属されたほか、ボーカル曲を集めたアルバムが発売されている。

傲慢のマップにおける通常戦闘で流れるのがこの曲である。最初のボスが傲慢を司る契約者であるため、主としてその影響下にある序盤のマップで聴くことになる(例外はあるが、立ち位置としては序盤の通常戦闘曲である)。イントロからエレキギターのヘヴィな轟音が響く濃厚さが印象的で、13秒ほどでストリングスの主旋律が入ると、それに呼応してパーカッションも本格始動し、伴奏ともども一気に爆発的な勢いをみせる。ストリングスやギターほど激しくは主張しないが、ピアノがうまく主旋律を支えていて、特に27秒頃で音階を滑り降りるグリッサンドを奏でると、後続のギターパートを力強く盛り上げる。しばらく吠え狂うようなギター演奏が続いた後、42秒で今度はストリングスが縦横無尽に駆け回り、恐れ知らずの疾走感を漂わせる。曲後半、オーケストラヒットが響くあたりでやや流れが変わるかと思いきや、直後に勢いを盛り返してループへと繋がっていく。ヒステリックとすら感じられる異様な昂揚感に満ちた一曲である。

翳のある格好良さですね。この曲に限らずインスト曲のタイトルは漢字(固めな表現)+カタカナですが、それがまた世界観にぴったりです。