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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#498 『影の旋律』(浜渦正志/レジェンド オブ レガシー/3DS)

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フリューがおくるファンタジーRPGレジェンドオブレガシーより、

浜渦正志作曲、『影の旋律』。視界不良域で流れます。

サガシリーズのスタッフを起用したフリュー製(開発はキャトルコール)の完全新作として登場した本作。精霊が住まうとされる神話の島・アヴァロンを舞台に、年齢も性別も経歴も異なる七人の主人公が、それぞれの目的のために島の謎に挑むことになる。全体的に古き良き時代のRPGを彷彿させる硬派なゲームバランスとなっていて、さながら飛び出す絵本のように描かれる手書き風のグラフィックと、ことばすくなに語られる世界観重視のシナリオが特徴である。戦闘面ではリアルタイムでキャラクターが成長する覚醒システムを採用しているほか、敵味方で精霊の契約を奪い合うことで、契約している側にアドバンテージが生じる仕組みとなっている。総じて難易度は高いが、工夫次第で活路を見出すことができる戦略性に富んだ仕上がりとなっている。後にスイッチ、PS4、PS5、Steam向けにHDリマスター版が登場した。

本作の音楽を担当するのは浜渦正志氏。本作のインスピレーション元とも言えるサガシリーズにおいて作曲経験があるフリーランスの作曲家である。神々や精霊といったキーワードが多く登場するハイファンタジーの作風にあわせて、本作では氏の得意とする格調高いオーケストラサウンドが揃っている。特にピアノとバイオリンの音色を用いることが多く、その透明感あふれる楽曲は本作の雰囲気づくりに大いに貢献している。サウンドトラックは主題歌も含めて収録されている。

フィールドを探索する際、一定の確率で辺りが濃い霧に包まれて視界が著しく悪くなる現象が発生する。こうした視界不良域のなかでは、モンスターのステータスは強化され、影人と呼ばれる凶悪なボスが出現するが、レアアイテムが手に入りやすいというメリットもある。このようなハイリスクハイリターンな場面で流れるこの曲は、闇に溶け込むかのようなストリングスの重低音とそれに寄り添うピアノの伴奏が印象的な一曲である。全体的に重苦しげな雰囲気を醸す一方で、短い休止符を多用して奏でられるスタッカート風の音使いは、どことなく心躍るような軽快さをも生み出していて、怖いもの見たさでどんどん進んでいきたい衝動を引き起こしてくれる。深追いは禁物というメッセージを秘めつつ、探索への好奇心を否応なく刺激する一曲である。

手探りな感じがすごくよく表現されていますね。緊張感が伝わってきます。