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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1418 『意気軒昂』(田中敬一/戦国伝承2001/AC)

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SNKがおくるベルトスクロールアクション戦国伝承より、

田中敬一作曲、2001の『意気軒昂』。日本ステージで流れます。

和洋ごった煮の珍妙な世界観で知られる戦国伝承シリーズの3作目にあたる本作。赤い月の夜に目覚めた荒ぶる魂を鎮めるべく、忍たちが世界各地で戦うことになる。8方向レバーと4つのボタンを用いる全6面構成のベルトスクロールアクションで、前半3面は順不同で攻略可能である。前作までは主人公は変身能力を持つ戦国武将の末裔という設定だったが、本作では初期4人+後半で追加される2人の計6人とも忍術使いの忍であり、曰くハイパー忍者アクションとして生まれ変わっている。変身要素がない代わりに、各キャラはそれぞれ専用の忍術を放つことができるほか、ゲージが満タンのときには画面全体に効果が及ぶ強力な究極忍法を繰り出せる。武器・素手・投擲・忍術の攻撃手段を組み合わせてうまくコンボを叩き込む点が本作の醍醐味であり、多少の慣れを要する分、道中の雑魚敵でもそれなりに歯応えがあって上達するにつれて爽快感が増していく。前作までと雰囲気を変えつつ、やり甲斐のある仕上がりとなっている。後にネオジオに移植されたほか、アケアカNEOGEOの一環としてスイッチ、PS4、XboxOne、PC、アプリ向けに配信された。

本作の音楽を担当するのは田中敬一氏。当時、自身が設立した音響会社・スタジオアクアに所属していた作曲家である。SNKにはかつて在籍していた経験がある。戦国伝承シリーズの作曲は本作が初参戦で、前2作を担当していた山手安生氏らに代わって単独で手がけている。本作では尺八や琴をはじめとする和楽器を取り入れて和風っぽさを表現しつつ、オーケストラヒットやシンセ、ギターをガンガン鳴らす派手なサウンドも取り揃えていて、全体的に良い意味で騒がしく活力に満ちている。サウンドトラックには短いジングルなども含めて収録されている。

日本ステージで流れるのがこの曲である。順不同で攻略可能な前半3面のうちの一つで、夜の高層ビル群や駅のホーム、歩道などの現代的な街並みのなかで戦うことになる。そうしたなか、お経を彷彿させる浮世離れした落ち着きを湛えたイントロで始まり、オーケストラヒットとともに三味線の粋な音色を加えることで、雅やかであると同時にモダンでもあるような独自の雰囲気を生み出す。9~11秒あたりでパーカッションが顕著に目立つと、以降は華やかさと淡泊さがバランスよく釣り合った和風テクノへと変貌する。28秒で笛の主旋律が入り、しばらく鮮やかだが侘びのあるメロディーを紡ぐ。笛の音の表現力はさることながら、1分3秒からのサビで奏でられるシンセストリングスの迫力は壮絶である。1分4~5秒や1分8~9秒でみられるようなDJスクラッチを違和感なく挿入することで、音色選びのセンスを感じさせる。バランス、センス、メリハリのいずれも秀でた一曲である。

笛と交代してシンセストリングスが入る1分過ぎの流れがすごく好きです。