VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1419 『試合BGM』(作曲者不明/プロレス/FCD)

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任天堂がおくるスポーツゲーム・プロレスより、

作曲者不明(後述)、『試合BGM』(仮称)。試合中に流れます。

プロレスを題材にした作品としてファミコンディスクシステム向けに登場した本作。プレイヤーは6人のプロレス選手のうち一人を選び、FWA(ファミコンレスリング・アソシエーション)およびFWF(ファミコンレスリング・フェデレーション)の大会に挑むことになる。CPU相手に5分間1本勝負で戦う1Pモードと、時間無制限で3本勝負・2本先取で戦う2Pモードが搭載されている。前者はランキング5位から開始して5分間1本勝負でCPU相手と連戦し、一度チャンピオンに上り詰めたら次は防衛戦で連続10試合を繰り広げ、最後に伝説の王者と戦う流れである。勝負は3カウントのピンフォール、場外20カウントのリングアウトトップロープ5カウントの反則負けのいずれかで決着する。ボタンの組み合わせでパンチやローリングソバット、ボディスラム、ラリアートなど10種類以上の多彩なワザを繰り出せるほか、選手ごとに固有の得意ワザが用意されている。内容は単純明快でストイックであるなかでも、一つ一つの動きや選手の個性など細部まで作り込まれている点が特徴である。シンプルだが本格的なプロレス体験を味わえる仕上がりとなっている。

本作にはスタッフロールの類が存在しないため、具体的な作曲者は判明していない。ただし、ゲームデザインを務めた故・増田雅人氏が、グラフィックまわりを除いて本作の大部分を手がけたらしいことは明かされている。本作では曲数は限られているものの独特な小気味良さがある楽曲が揃っていて、短いが耳に残るキャッチーさを備えている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

試合中に流れるのがこの曲である。音階を上り下りするアルペジオ(0~1秒、5~6秒など)と、小刻みに同じ音程を鳴らすフレーズ(1~4秒、6~9秒など)を繰り返しながらじりじりと盛り上げていく。試合BGMと言ってもとりたてて熱いわけでも激しいわけでもなく、ひたすら粘り強く反復する点が印象的で、まるで虎視眈々と相手の隙を狙っているかのような感覚が音を通じて伝わってくる。19秒から一際高らかなフレーズを奏でて仕切り直すことで、緊迫感を醸しつつ張り詰めすぎないバランスを保っている。また、44秒からしばらく軽快な間奏があり、次のループに向けて気持ち良く橋渡ししている。独自の緊張感と存在感を放つ一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。プロレス自体は個人的には詳しくないですが、本作の雰囲気とか作り込みとかは充実している感じがしますね。