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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1420 『Battle Flavour~小ボスのテーマ~』(黒川陽介/~聖魔導物語~/PSV)

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コンパイルハートがおくるダンジョン探索型RPG聖魔導物語より、

黒川陽介作曲、A.m.u.歌唱、『Battle Flavour~小ボスのテーマ~』。

各ダンジョンのボス戦で流れます。

コンパイルの代表作である魔導物語の久々の新作として装いを新たに登場した本作。カレーが大好きな少女・ププルは、魔導学園中等部の卒業試験で誤って伝説の魔導カレーのレシピを持ち帰ったことで停学を喰らい、代わりに潰れそうな近所のカレー屋を助けるために魔導カレーづくりの食材を求めて冒険することになる。従来のシリーズからキャラ、世界観、ゲーム性を一新し、Wizライクの3DダンジョンRPGではなくローグライクのダンジョンRPG形式を採用している。とことんカレーを強調した緩く脱力感のある作風と、それに見合ったカジュアルな難易度が特徴である。基本的なつくりはオーソドックスな部類で、独自要素としてダンジョン内でレシピと食材(具材・穀物・スパイス)があればどこでもカレーをつくってバフを得られるシステムが存在する。また、ダンジョン探索のお供として謎の生物・くぅちゃんが常についてきて、HPの代わりに満腹度に応じて自動で行動してくれる。全体的にバグが目立つ、足元の道具を直接使えない点を筆頭に操作性や各種UIに難があるなど、大雑把な印象があるが、シリーズ復刻を目指した意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは音楽制作会社・ZIZZ STUDIOの面々。具体的には泉邦宏氏、礒江俊道氏、江幡育子氏(作曲に加え一部作詞、歌唱も担当)、大山曜氏、加藤敏樹氏、黒川陽介氏、神保伸太郎氏、立花泰彦氏、筒井香織氏、豊田リョウジ氏が参加している。また、ボーカリストとしてZIZZ STUDIO所属のA.m.u.氏、ダンスボーカルユニットのSHAKE、声優の早乃香織氏、声優デュオのゆいかおり小倉唯氏と石原夏織氏)、シンガーソングライターのワタナベカズヒロ氏も携わっている。本作ではカレーのイメージに沿った、ポップでちょっぴりエスニックな薫りを纏った楽曲が揃っている。戦闘曲やキャラのテーマ曲などを中心に積極的にボーカルを取り入れている点が特徴的で、アイドルソングからミュージカル風の歌曲、電波ソングまで、明るく楽しく主張の激しいサウンドを楽しむことができる。サウンドトラックについては、挿入歌やエンディングのインストバージョンは含むが主題歌を除く形で収録されている。

各ダンジョンのボス戦で流れるのがこの曲である。イントロから抜群の勢いで飛ばすバイオリンとクラヴィネットが印象的で、瞬く間に濃密な空気感を充満させる。15秒からA.m.u.氏が歌い上げる英語ボーカルが載ると、当初のロック風の響きから代わってジャジーな色艶を帯びるようになる。歌声の鮮やかさに負けず劣らず、22~23秒や30~37秒でバイオリンが舞うように華やかな演奏を披露することで、歌と楽器がバランスよく協演している。38秒からはさらにギターが付き添って重厚な印象が強まり、1分6秒でサビを迎えると歌とバイオリンとギターがそれぞれ確固たる存在感を放ちながら見事に絡み合う。サビを抜けた後はギターの見せ場が待ち構え、スタイリッシュなノリを保ったまま二番目の歌詞に突入する。二度目のサビを終えた2分42秒以降にはブラスが加わってますますエキサイティングな響きが増し、再びギターの見せ場を挟んだ後、一転して3分16~27秒でピアノとチェレスタの小綺麗な間奏が入る。さながら食事の合間の口直しのように十分にリフレッシュできたところで満を持して最後のサビが始まる。徹底して格好良い英語ボーカルを貫くが、よく聴くと52~59秒などで "There is no match for that flavour, the magic in the spice(あの風味、スパイスの魔法に敵うものはない)" とカレーの魅力を高らかに歌っている。そのギャップもひっくるめて非常に刺激的な一曲である。

カレーはパン派です。