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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#822 『Blue Crusaders』(川越好博/塔亰Clanpool/PSV)

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コンパイルハートがおくるダンジョンRPG・塔亰Clanpoolより、

川越好博作曲、『Blue Crusaders』。物語前半の通常戦闘で流れます。

電撃PlayStationとのタイアップ企画・電パイルの一環で、神獄塔メアリスケルターの系譜を継ぐダンジョンRPGとして登場した本作。近未来のトウキョウを舞台に、突如上空に現れた逆さ都市群により国会議事堂が魔塔・黒界議事塔へと様変わりし、壊滅的な被害を受けるなか、新たな総理大臣に就任した少女・神貫ナツメ率いる内閣出撃チームのギインドールズが塔の攻略に挑むことになる。内閣というお堅い肩書に反してキャラの大半が美少女で、基本的にはさくさく進む3DダンジョンRPGだが、ダンジョン探索時のパラメータとして国民からのシジリツ(高いとボーナスが発生し、0になると強制帰還)が存在したり、ダンジョンの壁を掘ったり超高速で空中浮遊できたりする特殊な電脳アプリがあるなど、斬新な要素もすくなくない。設定こそ濃厚だが、全体的にキャラ描写も難易度もあっさりとした仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは礒江俊道氏、大山曜氏、川越好博氏の三名。いずれも音楽制作会社ZIZZ STUDIOに所属する作曲家たちで、コンパイルハート製の作品にはメアリスケルターなどでもおなじみの面々である。このうち大山氏がダンジョン曲と戦闘曲を中心に半数以上の作曲を手がけていて、礒江氏と川越氏はイベント曲など一部の作曲に留まっている。本作ではサイバー感漂う近未来的な作風にあわせて、シンセサイザーやノイズを駆使した電子音楽が揃っていて、シリアスだがノリの良いナンバーが多い。サウンドトラックについては限定盤にミニサントラが付属されているが、未収録のものが多い。

序盤から中盤にかけて、4つめの区域である煉獄グラナトゥムまでのダンジョンにおける通常戦闘曲として流れるのがこの曲である。バイオリンとピアノの華麗なイントロから始まり、いきなりフルスロットルで飛ばす疾走感たっぷりな音使いが特徴的である。伴奏に徹して強く主張することはないものの、終始存在感を放ち続けるエレキギターの激しい重低音が、鮮やかに疾駆する主旋律を気持ちよく下支えし、爽快感と重厚感とが見事にブレンドしてハイブリッドな昂揚感を生み出している。34秒あたりでリズミカルな3連符を奏でることで、ペースを整えるとともに勢いに弾みをつけ、世のため人のために邁進するギインドールズの快進撃を颯爽と彩る。非常に前向きで力強い迫力に満ちた一曲である。

バイオリンにピアノにギター、三者三様の魅力をそれぞれうまく引き出していて、すごく聴きやすい戦闘曲ですね。後半の戦闘曲はがらりと雰囲気を変えて、機械的な怪しさにあふれたスリリングな曲調で、雰囲気が大きく変わるからこそ良いメリハリが生まれている気がします。大山さんによる『Hyper Solution』、あわせてどうぞ。

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