VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1262 『DESCENDING TO MARS』(上西泰史/マーズマトリックス/AC)

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タクミコーポレーションがおくるシューティング・MARS MATRIXより、

上西泰史作曲、『DESCENDING TO MARS』。2面で流れます。

ギガウイングシリーズで知られるタクミが開発し、カプコンが販売を手がけた本作。西暦2309年、人類が火星に移住してから50年、突如として火星が一方的に独立を宣言したことを受け、地球連邦軍は最新鋭の精神感応型戦闘機・モスキートを派遣することになる。全6面構成で弾幕系の横画面縦スクロールシューティングで、操作は8方向レバーと1ボタンのみでおこなう。ボタン連打で通常弾、溜め押しで貫通弾、押しっぱなしでゲージ消費でモスキート展開(本作の特徴、後述)、そのままゲージが尽きるとグラビティホールボム(画面全体を対象とする強力なボム)といったように、ボタン一つで様々な攻撃を繰り出せる仕組みである。特筆すべきは攻防一体のモスキートシステムで、ゲージが続く限り無敵の吸着バリアを展開して敵弾を吸収し、ボタンを離すと吸収した弾をレバーの入力方向とは逆方向に発射できる。これをうまく敵に当てると経験値キューブが出現し、経験値に応じて戦闘機の性能強化やスコア倍率アップなどの恩恵が得られる。多少の慣れを要する分、コンパクトかつ派手なゲーム性を楽しめる仕上がりとなっている。後にドリームキャストに移植された。

本作の音楽を担当するのは上西泰史氏。バンド活動や各方面への楽曲提供などで手広く活動しているサウンドクリエイターである。ゲーム音楽だとギガウイングシリーズでも担当した経験があることから、タクミ製の作品ではおなじみの作曲家である。本作の音楽は、テクノやドラムンベースなどのエッジの効いたミニマルで中毒性のあるサウンドが揃っている。また、ドリームキャスト版では新曲やリミックス曲が追加されている。サウンドトラックについては、ギガウイング2の楽曲とあわせて収録されたものが存在する。

2面で流れるのがこの曲である。火星へと降下してマリネリスの前線基地を叩くことになるが、そうした場面を彩るにあたって、冒頭からサイケデリックトランス風味のトリップ感漂うスピーディーな音色が印象的に響く。13秒からシンセベースの野太い音色が入ると、つんのめるような勢いを帯びるようになり、高速かつ高密度なリズムパターンと相まって、やたら耳にこびりつく印象を与える。基本的に常に激しく、反復が多いが、33~39秒で今まで以上に休みなくビートが刻まれる一方で、52秒からは一旦落ち着きを取り戻し、かと思えば59秒頃からまた騒ぎ出すなど、打楽器に焦点を当てて聴くと細かな変化がみられる。特に顕著なのが2分17秒以降で、打楽器が長めに荒ぶった後、2分半過ぎから新フレーズが始まることから、打楽器が曲の流れを支えるだけでなく引っ張っているような感触がある。それまでのソリッドな聴き心地から一転、シンセパッドを強調することで宇宙の広がりを想起させる独特な浮遊感を醸すようになる。吸い寄せられるような魅力のある一曲である。

聴けば聴くほど嵌まっていく曲ですね。