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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1224 『オープニングテーマ』(Brian Howarth・Russel Lieblich・Bernie Whang/Ex-Mutants/MD)

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Malibu Comicsの同名作品を原作とする、

Malibu Interactiveがおくるアクション・Ex-Mutantsより、

Brian Howarth・Russel Lieblich・Bernie Whang作曲、

『オープニングテーマ』(仮称)。オープニングで流れます。

Malibu Comics社のSFアメリカンコミックス「Ex-Mutants」のゲーム化作品として欧米で発売された本作。時は2055年、戦争による環境汚染で人類がミュータント化した世界を舞台に、サイボーク科学者・Professor Kildareの実験成果によりミュータントから人間の姿に戻れた6人のEx-Mutantsのうち4人が、敵対する悪のミュータント・Sluggoに捕まったことを受けて、残る2人が救出に向かうことになる。ライフ制の2Dアクションで、開始時に男主人公のAckroyd(戦斧持ちのパワー型)か女主人公のShannon(ヌンチャク持ちのスピード型)のいずれかを選んで進めていく。メインウェポンのほか、道中でグレネードや地雷などのセカンダリーウェポンを入手することができ、これらは破壊可能な壁や床を破るのに用いられる。オープニングをはじめ、幕間にキャラの会話シーンや作戦司令シーンが挟まれる点が特徴である。ミュータントが跋扈する荒廃した近未来を描いているが、ステージの内訳は森や洞窟、研究所などクラシカルなラインナップで、全体的な操作性や遊び心地はオーソドックス寄りである。無難な水準でまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはBrian Howarth氏、故・Russel Lieblich氏(ファーストネームはRussellとも)、Bernie Whang氏。Howarth氏はイギリス出身の作曲家兼ゲームデザイナーで、当時Malibu Interactiveに所属していたようである。Lieblich氏はアメリカ出身の作曲家で、80年代初期からゲーム音楽に携わっていた。Whang氏はアメリカ出身のクリエイターで、当時Malibu Interactiveにプロデューサー職で在籍していた(本作のプロデューサーでもある)。本作のサウンドは全体的にプレーンな質感で、オルガンを思わせるような丸みと落ち着きを帯びた音色が多く用いられている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

オープニングで流れるのがこの曲である。タイトルデモから流れ始め、プレイヤーセレクト画面やその後の作戦司令シーンまで流れ続ける。朱色の空と廃ビル群を背景に、手始めに文字で世界観が説明された後、司令官であるサイボーグ科学者が登場して任務の経緯と目的を語り出す。退廃的だがヒロイックな雰囲気が漂う一連のシーンを彩るにあたって、出だしからズーンと不気味な効果音を鳴らして焦慮を煽り、徐々にリズミカルな勢いを帯びていく。主旋律も伴奏も短く音を区切って小刻みに音程を行き来することで、ノリの良いテンポ感と油断ならない切迫感を生み出している。15秒からパーカッションがチャカチャカとせわしなく鳴り響くと、ますます焦燥感が強まり、30秒では切れ目なく響く音階に歯切れ良く鳴る音色を組み合わせて、ますます昂揚感を刺激する。十分に緊張が高まったところで、40秒で不意にゴングのような音を挿入して一旦仕切り直す。1ループが完結するのはまだ先で、51~53秒や1分6~8秒、1分15~18秒などで何度もメインメロディーと裏メロを巧みに交錯させてラストスパートをメリハリ豊かに駆け抜けていく。怪しさと勇ましさがうまく釣り合った一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。司令官の見た目はたしかに初見だと悪役にしか見えなくて、それが曲のインパクトを強めている感じですね。映像もあわせてどうぞ。

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