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#1557 『降り注ぐ木漏れ日の中で』(大塚正子/ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~/NS・PS4・PS5)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

大塚正子作曲、ライザ3の『降り注ぐ木漏れ日の中で』。

異界の集落とその周辺のエリアで流れます。

錬金術士の日常と冒険を描くアトリエシリーズのうち、ライザを主役に据えた作品の3作目にあたる本作。前作から1年後、王都から故郷の島に戻った錬金術士・ライザは、突如として島の近くに出現した群島の謎を追ううちに、やがて仲間たちと錬金術の根源に迫る最後の夏の冒険を繰り広げることになる。主人公続投、新旧キャラがほぼ勢揃いでそれぞれの成長と旅の終着点を描いた集大成的な物語が特徴である。冒険の舞台は4つの地方で同一地方内はシームレスに繋がる半オープンワールド形式で、戦闘は引き続きリアルタイム進行で手早くコマンド入力していくシステムを採用している。本作では新たに文字通りのキーアイテムとして鍵の概念があり、探索ではギミック突破やトレハン要素として、戦闘ではステータス強化やバフとして、調合では作成個数や属性追加など各種ボーナスとして、やや複雑だが多彩な使い道が用意されている。物語に関しても相応に入り組んでいて専門用語が頻出するが、前作までの伏線や対処すべき課題は概ね回収していて、シリアスな本筋とカジュアルな日常描写やキャラ同士の交流を両方楽しめる。総じてシリーズの積み重ねを活かして綺麗にまとまった仕上がりとなっている。後に一日遅れでSteamにも登場した。

本作の音楽を担当するのは裏谷玲央氏、大塚正子氏、松村佑樹氏、水上浩介氏、三武亜紗美氏、柳川和樹氏。大塚氏、松村氏、三武氏はコーエーテクモ(ガストは同社の一部であるため)に所属する作曲家である。裏谷氏と柳川氏(元ガスト所属)はフリーランス、水上氏はかつてコーエーテクモに在籍していた経験があってシンガポール音楽事務所CO-musicに所属している作曲家である。前作とほとんど同じ体制だが、アサノハヤト氏と入れ替わる形で新たに大塚氏がシリーズに初参戦している。音楽の方向性は従来通り、戦闘曲はエネルギッシュに、フィールドやイベント曲は壮大なオーケストラを用いてファンタジックに仕上げていて、本作では探索のシームレス化に伴って一部の曲にはインタラクティブに変化する仕掛けが搭載されている。また、前作・前々作の流用とアレンジも多く使用されている。サウンドトラックには主題歌も含めて3枚組で収録されている。

ウルディスの聖跡で流れるのがこの曲である。異界の集落であるウィンドルとその周辺を指すエリアで、紫色の空と大地が広がる妖美な風景が目を引く。チェレスタクワイア、チェロの組み合わせで紡ぐ艶やかなイントロでたちまちにして魔法にかけられ、10秒から囀る鳥のように美しくピッコロが響き渡るとさらに深く魅入られる。初めは物憂げな曲調だが、27秒以降で徐々に湧き上がるように気勢を強めていき、36秒には豊かなバイオリンの高音を駆使して絶頂の盛り上がりをみせる。弦の後を追うように笛の見せ場があり、さらに進むと56秒からハープが聴こえたり、1分18秒からピアノが加わったりして様々な楽器にスポットライトを当てている。1分半を過ぎる頃には当初感じられた暗さはすっかり息を潜め、ひたすら優雅で上品なアンサンブルを披露する。が、その後しばらくすると、その印象を覆すように2分42秒からクワイアが、3分13秒からオーケストラが恐ろしく響くパートがあり、特に後者は非常に急激に不吉な雰囲気を生む。4分過ぎで一旦収束するがまだ終わらず、聴き馴染みのあるメロディーながらも楽器を入れ替えて6分弱まで新鮮な演奏を見せ続ける。神韻縹渺たる一曲である。

クワイア不在でピアノ主体の夜バージョン『森の囁きに誘われて』も素敵です。あとついでにもう一曲、重要なイベントシーンで使われる主題歌のインスト版『あの夏の隠れ家 - climax』(作曲は水上さん)、歌入りよりもはるかにインスト前提で聴かせるつもりがありそうな強力なアレンジなのでぜひ聴きましょう。

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