VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1517 『Hide-and-seek in a sea』(工藤吉三/雷電V Director's Cut/PS4)

www.youtube.com

MOSSがおくる縦スクロールシューティング・雷電より、

工藤吉三作曲、PS4版5の『Hide-and-seek in a sea』。ミッションステージ1で流れます。

アーケード中心で展開する雷電シリーズのうち、初の家庭用機新作としてXbox Oneに登場した5のPS4移植にあたる本作。全8面から成る基本的なゲーム構成はそのままに、新要素の導入や旧要素の復活などの追加が施されている。新要素に関しては、ミッションステージというボーナス面が2つ追加され、それぞれ3面と6面クリア後に挿入される。通常面とは異なり、自機は被弾しても体力が減らず、同様に対峙するボスも耐久力は無限だが、攻撃を当てることで勲章を稼ぐことができる。得た勲章に応じてランクが算出され、成績に基づいて本編にスコアが還元されたり、報酬としてボンバーやフェアリー(瀕死被弾時に受動的に自機から飛び出る回復アイテム)のストックが加算されたりする。本編とは違ったルールで撃ちまくる快感を味わいながら美味しい見返りが期待できるが、最高ランクを取得するには相応の実力を要する。そのほか、ストーリーを彩る日本語ボイスが新たに実装された。旧要素に関しては、シリーズ恒例のローカル2人同時プレイが復活した点が挙げられる。総じて決定版にふさわしい充実感がある仕上がりとなっている。後にSteamとスイッチに登場した。

本作の音楽を担当するのは工藤吉三氏。音楽制作会社ベイシスケイプに所属する作曲家である。移植元に引き続き本作でも追加曲の作曲を手がけている。追加曲の内訳は前述のミッションステージ用の2曲であり、本編でみられたシンフォニックロック系の路線をそのまま踏襲している。ステージ構成とリンクしたダイナミックな曲構成は健在で、ボーナス面であっても気が抜けない、むしろボーナス面であるからこそ激しく昂揚感を掻き立てるようなパワフルな出来栄えに仕上がっている。サウンドトラックについては、ダウンロード版の早期購入特典として追加曲含む4曲を収録したミニサントラが配信されていたほか、パッケージ版の限定盤に既存曲と追加曲を網羅したフルサントラが付属された。

ミッションステージ1で流れるのがこの曲である。海中に潜り、3シーンにわたってボスと撃ち合うことになる。手始めに信号を発するかのような調子でピアノが同じ音程で響くが、8秒でステージ冒頭の演出を終えて自機が操作可能になると、ピアノはにわかに勢いづく。高音主体の速弾きで熾烈なほど神秘的な印象を与え、19秒でパーカッションが参戦するとさらに曲全体の激しさが増す。46秒でシンセストリングスが加わった後に55秒から深遠な演奏が始まると、激しく美しく謎めいた雰囲気をたっぷり充満させる。ちょうど作中で第1シーンが終わる頃、1分12秒あたりからギターが聴こえ出し、続けてフルートの軽やかな音色を持ってくることで未知の領域へと突入する感覚を強めていく。聴き進めるうちにヒートアップしてシンフォニックロックらしさが強調され、なかでもピアノは限界を超えて盛り上がり続けるが、2分20秒で流れが変わる。作中でもここがシーンの変わり目であり、最終シーンに入るにあたって、これまで伴奏に徹していたピアノは主旋律をも兼任するようになる。パーカッションやストリングスの分厚い音色を伴いながら、ピアノは常に燦然たる存在感を放ってラストスパートを駆け抜けていき、3分20秒過ぎにはシーンの終幕とともに急速に収束する。海中でひたすら目前の敵を撃ちまくる極限状況を見事に表現した一曲である。

私は弾けないので素人考えですが、この調子でピアノを弾いたら腱鞘炎まっしぐらになりそうですね。それはさておき、せっかくなので速弾きストリングスが映えるミッションステージ2の『Tag in the sky』もどうぞ。

www.youtube.com