VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1516 『ステージ 5』(竹間淳/サターンボンバーマン/SS)

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ハドソンがおくるアクション・ボンバーマンより、

竹間淳作曲、サターンの『ステージ 5』(仮称)。最終面で流れます。

ボンバーマンシリーズ初のセガサターン作品として登場した本作。ムジョー率いるヒゲヒゲ団が封印のクリスタルを奪って魔神を復活させ、クリスタルを過去の世界に隠したことを受け、ボンバーマンはタイムトラベルしながらクリスタルを取り戻す戦いに挑むことになる。基本的なゲーム性はいつも通り、十字型に爆散する爆弾をフィールド上に配置して手際よく敵を殲滅していくものである。ゲームモードは3種類あり、物語に沿って各6~8ラウンド+ボスから成る全5面を攻略するノーマルゲーム、最大10人対戦に対応したバトルゲーム、スコア稼ぎや段位認定を目指すマスターゲームが収録されている。本作はハードの移行に伴ってデモアニメや演出、ギミック類が大幅に充実するようになったほか、ビー玉ボムや地雷をはじめとする多彩な新アイテムが追加された。また、成長要素のあるお助けキャラとして新たに恐竜のティラが登場し、騎乗すれば素早くダッシュしたり雄叫びで周囲の動きを止めたりして様々な能力を扱うことができる。目玉の対戦要素は前述の通り最大10人まで参加できる豪華なつくりで、試合形式や初期配置に関する設定はもちろん、シリーズおなじみのみそボン(試合中にやられたプレイヤーが退場後も外野から爆弾を投げ入れて試合に介入できるルール)も健在である。ボリュームたっぷりでもりもり楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは竹間淳氏。カタカナの竹間ジュン名義でも知られ、普段はアラブ音楽のナーイ奏者として活躍するミュージシャンである。ボンバーマンシリーズには初代から携わっていて、シリーズ独自の深みのあるエスニック×ミニマルテクノ系の作風は本作でもいかんなく発揮されている。氏のほかに編曲担当として秋元薫氏、遠藤稔氏、山本裕直氏も参加している。本作では各ゲームモードにあわせて曲数が多めに用意されている。特にノーマルゲームはタイムトラベルという題材を扱っているため、曲ごとに江戸や西部開拓時代らしさが感じられる古今東西ワールドミュージックを聴くことができる。サウンドトラックについては、本作の一部楽曲がハドソンゲーム音楽全集に収録されているものの、本作単体では未発売である。曲名は命名規則に倣った便宜上の仮称とする。

最終面のムジョーワールドで流れるのがこの曲である。敵の本拠地たる未来の基地都市であり、これまでのステージ群は過去の時代だったがここだけ趣ががらりと変わる。そうしたなか、冒頭から柔らかなサイン波の音色を鳴らすことで、瞬く間に引き込まれて心穏やかに電子の世界に没入できるような印象を与える。クライマックスのステージにしては静かすぎるとも言えるが、それがかえって神経を昂らせて集中力を研ぎ澄まさせてくれる。7秒から軽快なリズムを刻み始め、15秒からさらに本格的なビートを伴って徐々にテクノ感を強めていくと、やがて23秒でメロディーらしきフレーズが入る。とはいえほとんど似たり寄ったりの反復で構成され、55秒でディスコチックなバッキングが加わっても大きく変わることはない。変化が表れるのは1分10秒以降、ベースの見せ場が設けられる部分で、続けて1分27~42秒でシックな演奏を披露した後、再び冒頭でみられたサイン波が聴こえるようになる。2分過ぎにはこれまでの集大成として様々な音色が一堂に会するが、それでも相変わらず当初の印象通り、心穏やかに没入できる絶妙な温度感を貫き続ける。迫る決戦に向けてあえて静かに、それでいて着実に機運を高めてくれる一曲である。

静かに始まってすこしずつ盛り上がるけれどそんなに盛り上がるわけでもなくて……という構成がとても良いですね。