VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1515 『turn the tide』(nkis/G-SAVIOUR/PS2)

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機動戦士ガンダム」のドラマ作品を原作とする、

サンライズインタラクティブがおくるロボットシューティング・G-SAVIOURより、

nkis作曲、『turn the tide』。Chapter 1「G 始動」で流れます。

ガンダムシリーズの20周年記念作品として日本とカナダで共同制作された実写ドラマ「G-SAVIOUR」を題材にした本作。ガイアの光事件から1年後、地球圏の勢力バランスを保たんとする極秘組織・イルミナーティに所属するパイロットのリードは、軍事政権獲得を目論むセツルメント議会軍のバイス准将の計画を阻止すべく、Gセイバーを駆って戦うことになる。全8章から成るミッションクリア型の3Dシューティングで、原作ドラマで扱われた事件の後日譚を描いている。3D空間で機体を動かし、ビームライフルで敵を撃ったり、近接時はビームサーベルに自動的に切り替えて斬り払ったりしながら任務を進めていく。全体的な雰囲気やグラフィックは当時の水準からみて良好に表現されているが、操作は簡素で極端なところがある。具体的には自機は飛行はおろかジャンプもできない仕様で、必殺技として周囲に弾を撒き散らす特殊攻撃があるが、制御が利かず命中精度に難がある。また、基本的に一撃が重く、雑魚敵は近距離・遠距離問わず原則一発死で、その分こちらも被弾すると手痛く削られるため、嵌めるか嵌められるかの駆け引きが繰り広げられる。メカデザインのセンスや、原作が海外の実写という点を踏まえた英語ボイスの充実ぶりは特筆に値するもので、諸々ひっくるめてやや異質と言える仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはnkis氏。スタッフロールにはサウンドチームという括りで氏のほかに荒巻賢治氏、太田修司氏、T. Seiru氏の名前が確認できる。あまり情報が多くないため全容が掴みにくいが、いずれもおそらく当時、本作の開発元であるアトリエ彩に所属していた作曲家である。また、主題歌はLovable(シンガーソングライターのJoelle氏と、後にsolaya名義で活動することになる山本剛大氏から成るユニット)が担当している。本作ではメロディーによる主張を控えめにして、すっと世界観に融け込むようなミニマルテクノやトランス系のサウンドを揃えている。ロボットものとしてよりもシューティングとしての色合いを強調しているようで、本家のガンダムシリーズとは異なる音楽の雰囲気を味わうことができる。サウンドトラックには主題歌も含めて収録されている。

Chapter 1「G 始動」で流れるのがこの曲である。南米のリオデジャネイロ郊外の宇宙港を舞台に、議会軍に占拠された一帯を解放すべく出撃することになる。最初のステージということもあり、開けた戦場で敵の配置もまばらなので、この爽やかなBGMを聴きながらぐんぐん突き進むことができる。初めはどこか抽象的で浮遊感あふれるシンセを軸とするが、13秒から四つ打ちのビートが入ると、その音はまるで心臓が早鐘を打つような顕著な実在感がある。26秒でさらにテンションを引き上げ、だいぶ温まってきたところで53秒から遅まきながらピアノのメロディーが聴こえ出す。ピアノの音色は清涼感があって印象的だが、主役と言えるほど目立つわけではなく、あくまで曲を支える一要素に留まっている。が、1分19秒からシンセストリングスを伴って徐々に勢いづき、1分34秒で綺麗に一呼吸置いてサビに突入すると、今度は主役にふさわしい白眉の活躍をみせる。右手で奏でるメインメロディーと、左手でリズミカルに刻む伴奏の両方ともが鮮やかな存在感を放っていて、素晴らしく冴え冴えとした聴き心地をもたらす。2分26秒でフレーズの終端に辿り着いたかと思いきや、2分32秒でもう一度だけ締めの音色を披露して気持ち良い後味を残してくれる。開始直後のステージを彩るにふさわしい、最高潮に好調な滑り出しをみせる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。曲名は潮流を変える、すなわち形勢逆転の慣用表現で、イメージにぴったり合ってますね。