ハドソンがおくるトレーディングカードゲーム・ポケモンカードGBより、
嶋倉一朗作曲、2の『GR団員戦』(仮称)。GR団員戦で流れます。
ポケモンシリーズの外伝作品群のうち、ポケモンカードゲームを再現した作品の2作目にあたる本作。前作で頂点の座に上り詰めた主人公は、突如現れた謎の組織・グレートロケット団に奪われてしまったカードを取り戻すべく奮闘することになる。基本的なゲーム性は前作同様で、収録カードは前作から倍増してロケット団・拡張シートシリーズ・イントロパック+一部のプロモカードと本作オリジナルを加えた400種類以上である。前作はゲームボーイカラー対応だったが本作は専用ソフトとなったことでいっそう色彩表現に磨きがかかったほか、GR団との対決を軸に据えることでストーリー性が大幅に強化されてボリュームアップした。制限付きの特殊ルールの導入、ミニゲームやカード合成ができるゲームセンターの登場、相変わらず強力な伝説のカードとクリア後のチャレンジ要素の存在など、前作を踏襲しつつ本作の新要素も充実している。惜しむらくは時期的にすでに金銀発売後だが金銀からの参戦が限定的である点、また時期的に次世代機のGBA発売直後で当時の最新環境に乗り切れていない点が挙げられる。とはいえ前作からは着実にアップグレードされていて、赤緑世代の延長線上の作品として十分に楽しめる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは嶋倉一朗氏。当時ハドソンに所属していたサウンドクリエイターで、前作に引き続き本作も携わっている。前作で築いた明るさと落ち着きを兼ね備えたサウンドを受け継ぎつつ、本作では物語上で明確に対立する敵組織が存在することから、GR団関連の曲を中心として手強くシリアスな雰囲気を湛えるようになった。前述の通り本作はすでに次世代機発売後のゲームボーイ末期の作品であるため、その分だけ扱い慣れているのか手堅く円熟したGB音源の響きを味わうことができる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
GR団員戦で流れるのがこの曲である。冒頭からノイズ音を巧みに用いて本物らしいパーカッションパートに仕立て上げていて、そこに中低音の渋いリフを載せることで対戦のスリルとモチベーションを見事に引き出してくれる。15秒から主旋律が入ると、冷静だけど躍動感があり、鮮やかだけど華やかすぎず、適度な温度感を維持しながら盛り上げていく。曲が進むにつれて30秒あたりから陽気なジャズのような雰囲気が強まるが、ひと段落すると再び元の調子に戻る。50秒以降では音色を重ねて前よりも厚みを持たせ、一連のフレーズが終わると今度は1分24秒からにわかに勢いづく。軽快で瀟洒なメロディーを紡いでたっぷりムードを整えた後、1分40秒でパーカッションも含めて一斉に大胆に音を鳴らすことで佳境を迎える。1分56秒からやがてループに向けて収束する際には、最後まで見せ場を欠かさず優れた後味を残す。ノリよくバランスよくセンスよく駆け引きの醍醐味が詰まった一曲である。