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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1317 『水源エリア』(永松亮/ゼルダの伝説 トライフォース3銃士/3DS)

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任天堂がおくるアクションアドベンチャーゼルダの伝説より、

永松亮作曲、トライフォース3銃士の『水源エリア』(仮称)。水源エリアで流れます。

ゼルダの伝説シリーズのうち、4つの剣の流れを汲むマルチプレイに特化した作品として登場した本作。オシャレな国のお姫様が魔女の呪いによって着脱不可の全身タイツ姿にされてしまったことを受け、魔女討伐のための勇者募集の布告に応じた三人一組の主人公たちが魔境へ旅立つことになる。ソフト1本で賄えるローカル通信か、各環境で1本ずつのインターネット通信を介してプレイヤーを集め、揃った3人で冒険を進めていく。冒険の舞台となる魔境は見下ろし型で高さの概念があり、8エリア・各4コースの全32面のなかから抽選で行き先が決まる。弓やバクダンなどのアイテム類はぜんぶで9種類あり、剣以外はコース中に設置されたものを一人ずつ選んで用いる仕組みである。本作の最大の特徴はトーテムという肩車を用いたアクションで、勇者同士が担ぎ合うことで一人では到達できない高い位置の敵や仕掛けにも届くようになる。そのため、個別に行動する役割分担の醍醐味と、足並み揃えて難関に立ち向かう共同作業の醍醐味を両方味わうことができる。このほかにも能力に紐づく服の着せ替え、特殊条件で冒険に挑むとくべつ任務、PvPの闘技場、それにシングルプレイ用のモードも存在する。意欲的であると同時にバランスの取れた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは永松亮氏。当時、任天堂に所属していた作曲家である。ゼルダシリーズの作曲には本作の一つ前の作品である神々のトライフォース2で初参加してから、作風が近いこともあってか本作でも続投する形となった。本作ではかなり色濃くケルトアイリッシュを意識したような民族音楽風のサウンドが揃っていて、フィドルアコーディオン、ギターなどをふんだんに用いた溌溂とした楽曲を楽しむことができる。また、トーテム状態だとコーラスがフィーチャーされ、トーテムの段数やプレイヤーがどの段にいるかによってそれぞれすこしずつ響きが異なる。サウンドトラックについては、ごく一部の楽曲だけシリーズ30周年記念盤に収録されているが、本作単体で網羅したものは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

水源エリアで流れるのがこの曲である。湖のかくし砦、かえらずの淵、うつろいの入り江、水の神殿から成るエリアで、その名が示す通りコースのあちこちに水場があり、水柱をつくる・水を渡る・水位を変えるといった水系のギミックが多く用意されている。そうしたなか、手始めにマリンバを鳴らして静かに好奇心をそそるような雰囲気を生み出し、6秒から非常に澄んだバイオリンの音色を響かせることで、うっとりさせられるほどの美しさを漂わせる。本作の楽曲は全体的に活発で勢いよくフィドルを掻き鳴らすものが多いなかで、この曲は異質とも言える奥ゆかしく嫋やかな響きに満ちている。そのうえで盛り上がる部分はしっかりメリハリをつけて盛り上げていて、たとえば42秒以降でストリングスが伴奏に回って吹奏楽器が主旋律を担うようになる流れはとても印象深い。ひとりでに溜め息が漏れるほど素敵な一曲である。

トーテム状態の差分は、特に下段にいると重いコーラスと打楽器が加わりますが、それが原曲の雰囲気から離れるような、しかし聴いているうちに馴染んでくる気がして好きです。下段バージョンもあわせてどうぞ。

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