Paradigm Entertainmentがおくる3Dシューティング・Aerofighters Assaultより、
椎名晃嗣作曲、『ANTARCTIC OCEAN』(仮称)。9面で流れます。
ビデオシステム製のシューティング・ソニックウイングスシリーズのうち、アメリカのParadigm Entertainmentが開発を手がけた本作。世界征服を企む軍事組織、ファタ・モルガナにより南極に特殊爆弾が投下され、溶けた氷の影響で各国の主要都市が水没した未曽有の事態を受け、国連軍平和維持部隊・プロジェクトブルーの航空隊が出撃することになる。主にアーケードと家庭用の双方で展開してきたシリーズだが、本作は家庭用機向けのみで、従来の2Dシューティングから3Dフライトシューティングへとジャンル変更された。全11面構成(条件次第で突入するボーナス面含む)、自機は初期4機+隠し2機から選択可能で、キャラの布陣が濃いことで知られるシリーズの例に漏れずアイドルやイルカも出てくる。幕間のブリーフィング、HUDやレーダー表示、敵機とのドッグファイトなど、このジャンルを形作る諸要素が過不足なく搭載されている。ミッションの種類や状況はそこそこ充実しているほか、2人対戦やボスとの一騎打ちに挑戦できる専用モードもあり、幅広い遊びが用意されている一方で、ややスローテンポで不安定なゲームバランスが目立つ。北米先行で発売されたのち、国内では遅れて「ソニックウイングス アサルト」という題名で登場した。
本作の音楽を担当するのは椎名晃嗣氏。主に音響関連の仕事を手がけているようで、ゲームに携わった例は少数だが、本作のほかに同じくビデオシステム系統の作品でF-1 WORLD GRAND PRIXやクイズ&バラエティ すくすく犬福などにおいてクレジットに名を連ねている。ソニックウイングスシリーズといえばこれまで細井聡司氏らが中心となって独自の恍惚感のあるサウンドを生み出してきたが、本作ではシリーズ初参戦の椎名氏が、ジャンル変更に伴って一味異なるロックやオーケストラ系の派手な楽曲を書き下ろしている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
9面「ANTARCTIC OCEAN」で流れるのがこの曲である。その名が示す通り、事の発端たる南極を舞台とするミッションで、海と氷床とオーロラが織り成す風景に多数のUFOが出現する異質さが特徴的である。そうした特色を踏まえて、他の楽曲でみられるエレキギターやオーケストラヒットを多く用いた作風とはすこし毛色が異なる曲調に仕上がっている。エレキギターはたしかにこの曲でも用いられているが、長く伸ばした音を伴奏で鳴らすという使い方に限定されているうえ、9~13秒や19~38秒などでしばしば不在になる。代わりにピアノと木琴が主体となって弾力のある音色を奏で、ギターが不在の間は一際掴みどころがないような不思議な躍動感を生み出す。特に19秒でオルガンが加わると、そのふくよかな響きは汽笛を彷彿させる味わい深さがあり、相変わらずリズミカルに鳴り続けるピアノとも相まって軽妙な聴き心地をもたらす。得体のしれない奇妙さと得も言われぬ心地良さが融合した一曲である。
とても癖になる響きですね。このいかにも機械っぽい打ち込みのピアノの音が好きです。