プロデュースがおくるアドベンチャー・ミスティックアークまぼろし劇場より、
大熊謙一作曲、『妖精郷』(仮称)。第1幕と第5幕のフィールドで流れます。
おとぎ話のような世界観で知られるミスティックアークの後継作として登場した本作。人が消える異変が起きる小さな港町に住む主人公は、まぼろし劇場を率いるカカシ頭の座長に声をかけられ、気付けば劇場の舞台となる不思議な世界に旅立つことになる。前作はRPGだったが本作は3Dアドベンチャーで、全体を貫くファンタジカルな画風やアークにまつわる設定は共通しているが、直接的なストーリーやシステム上の繋がりは薄い。主人公はアクションが得意な少年のレミール、謎解きが比較的軽めな少女のアリス、そしてクリア後に選べる非力なリディアの三人から成り、開始時に選んだ主人公によって細かな展開や謎の解き方が異なる。基本的にフィールド上で妖精やアーク(妖精の上位存在のようなもの)と交流し、助けたお礼やカードゲームでの対戦を通じて彼らの力を宿したカードを受け取り、それを使ってフィールドのギミックを解いていく。カードは使ったらなくなるので定期的に補充しないといけないが、フィールドは割と広く、操作性は3D黎明期らしく視点変更不可で直感的で快適な移動が難しいため、辛抱強く行ったり来たりを繰り返す必要がある。総じて手間がかかるが独特な世界観に浸れる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは浅井真氏、故・大熊謙一氏、谷本真規氏、本田優一郎氏。いずれも当時、音楽制作会社ツーファイブに所属していた作曲家である。前作は音楽制作会社ミントの故・森彰彦氏が手がけていたが、本作では作曲陣が一新されている。前作は戦闘曲を中心として非常に熱量あふれるサウンドが目立ったが、本作はアドベンチャーでジャンル変更しているため音楽性も調整されている。大熊氏曰く「ユーラシア大陸の民族音楽」で「19世紀のヨーロッパの雰囲気を出すために、あえてアジアテイストも入れて」いるとのことで、不思議な聴き心地の良さがあるアコースティックなフォークサウンドが揃っている。サウンドトラックは未発売だが、大熊氏のサイトにいくつかの担当曲のデモ音源が公開されている。
第1幕と第5幕のフィールドである妖精郷で流れるのがこの曲である。ピクシーと呼ばれる小人たちが暮らす緑豊かな森である。本作のメインテーマでもみられる幻想的な歌声をフィーチャーしていて、出だしから否応なしに異世界へとスリップさせられるような魅惑の没入感を生む。歌声のインパクトが強烈だが、18秒から歌と入れ替わるようにして朗々と響く笛の音も非常に象徴的である。冒頭でぐっと引き寄せたあとは、すんなりと耳に馴染むニューエイジやワールドミュージック的な曲調で穏やかに彩る。主旋律を務めているのは笛だと思われるが、32~36秒や50秒以降では弦楽器に近い響きがある。56秒からしばらく華やかでせわしげなフレーズを奏で、1分14秒からは一転してゆったりと余裕たっぷりな展開をみせることで、一つの曲のなかでめくりめく移ろう自然の豊かさを感じさせる。1分33秒には一際透明感のある笛の音が加わって気持ち良く伸び伸びとした演奏を披露し、やがて1分52秒で振り出しに戻る。妖精郷という言葉から想像する曖昧で魔術的な光景を音を通じて一気に具現化してくれる一曲である。
おおくまさんのサイトだとこの曲は『la foret』という題になっていますが、曲名の開発名称かな? アクセントが抜けていますけどフランス語で「森」という意味ですね。メインテーマもあわせてどうぞ。