VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#285 『帝都アグニラータ』(ACE+/ゼノブレイド/Wii)

www.youtube.com

モノリスソフトがおくるオープンワールドRPGゼノブレイドより、

ACE+(CHiCO・工藤ともり・平松建治)作曲、『帝都アグニラータ』。

帝都アグニラータで流れます。

ゼノギアスゼノサーガでおなじみのゼノを冠する作品として、世界観を一新して登場した本作。大昔の戦争で死に絶えた巨神と機神、二柱の神の骸を舞台に、そこに息づく生命の生き様を描いている。緻密に練り込まれた舞台設定と世界の仕組み、見渡す限りの広大なフィールド、敵からの致命的なダメージを予測してピンチを乗り越えることができる未来視によるスリリングな戦闘システムが特徴である。そこにクエストやユニークモンスター(フィールド上に鎮座する強力なボスモンスター)といった寄り道要素も相まって、総じて完成度が高いWii屈指の大作に仕上がっている。後にNew3DS向けに移植されたほか、HD化して追加要素を付したリマスター版がスイッチ向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは清田愛未氏、下村陽子氏、それにACE+の面々である。ACE+とは、CHiCO氏と工藤ともり氏から成る音楽ユニット・ACEに、本作限定で平松建治氏が参加したものである。この他、編曲や主題歌のみの参加で成田勤氏や光田康典氏も参加している。下村氏を除く作曲家たちは軒並み続編の2でも作曲をおこなっていて、その際、平松氏はACE+名義ではなく単独で作曲を手がけている。作中のムービーシーンに合わせて音楽がシンクロするなど、サウンドに対するこだわりが随所で窺われ、こうした良質な楽曲群もまた本作の大きな特色の一つである。サウンドトラックは全曲収録した通常のものに加え、New3DSの早期購入者特典のミニサントラ、スイッチ版の限定盤に同梱されたミニサントラがそれぞれ存在する。

帝都アグニラータで流れるのがこの曲である。マシーナや機神兵といった機械生命体が生息する機神界フィールドのうち、アグニラータは物語終盤に訪れる場所で、遥か昔の大戦によって廃墟と化している。退廃的な風景を彩るにあたって、手始めに優しく穏やかなピアノのイントロを持ってくることで、すっと耳に馴染むようなセンチメンタルなムードを整える。10秒頃で消え入りそうなストリングスの伴奏が加わり、20秒手前からは主旋律も兼任するようになるが、相変わらずその音色は脆く壊れそうな響きを帯びている。40秒あたりでハープが入ると、後を追うように徐々にピアノや笛、ストリングスが合奏し出し、すこしずつ力強さを増していく。その旋律は、すでに滅びて久しいながらも、在りし日の栄光を求めるが如く展開していき、1分半に至る頃にはだいぶ華やかな印象を与えるようになる。特に2分14秒あたりからは帝都としての威厳を束の間だけでも取り戻し、悲痛なまでの美しさをみせつける。曲を通じて栄枯盛衰の流れを実感させてくれる一曲である。

夜間に流れる『帝都アグニラータ / 夜』はピアノを引き立たせて物悲しさを強調していて、そちらもとても素敵です。あわせてどうぞ。

www.youtube.com