VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#284 『THE WAY OF ALL FLESH』(ひらにょん/HellSinker./PC)

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RUMINANT'S WHIMPERがおくる縦スクロールシューティング・HellSinker.より、

ひらにょん作曲、『THE WAY OF ALL FLESH』(仮称)。

クリア後のEXステージ「万人の途」で流れます。

らじおぞんでで知られるひらにょん氏による個人の同人サークル・RUMINANT'S WHIMPERの新作として登場した本作。輝かしい時代が過ぎ去り、遺物が蔓延る世界を舞台に、遺言執行者・EXECUTORは、人工島に聳え立つ遺跡・CARDINALSHAFTを調査、制圧することになる。マニュアルの難解さやゲームシステムの複雑さ、世界観の奥深さは相変わらずだが、その不可解なまでのとっつきにくさを克服した暁に本作の面白さが分かる仕組みである。敵や地形に接触しても基本的にダメージ判定がない点、自機の周囲にサプレッションレディアスと呼ばれる防御空間を展開して敵弾の速度を鈍化ないしは消去できる点などが特徴の一部で、自機の扱い次第で取れる戦略が広がっていく。弾幕が織り成す芸術的なアートワークや、良好なゲームバランス、全体的に癖が強いながらもシューティングゲームとして極めて堅実な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはひらにょん氏。RANYONやTONNORといった別名義を持つRUMINANT'S WHIMPERの主宰者である。氏は音楽に限らず本作のシナリオ、グラフィック、プログラムなど、ほぼすべてを単独で製作している。そのため、本作に収録されている楽曲はいずれも氏の思い描いた世界をまるごと体現したものとなっていて、曲尺もステージの長さにだいたい一致している。曲名は一部不確定だったり未判明だったりするため、ここでは便宜上の仮称を用いる。

本編クリア後に追加される二つのEXTRAステージのうち、「万人の途」と呼ばれる二番目の面で流れるのがこの曲である。ステージ名は婉曲表現で死を意味するもので、そのニュアンスを印象付けるにあたって、非常に長く続くイントロで焦燥感を滲ませる。主旋律のストリングスが入るまで実に4分以上かかるが、そこに至るまでの道のりで、たとえば50秒頃ですこし曲調を抑えてみたり、2分20秒頃で燦然と煌めくようなノリを披露してみたりして、じわじわと勢いを蓄えていく。3分37秒からローファイな電子音を交えてさらに緊張を高めていくと、4分2秒で満を持して弦の悲痛な音色が加わる。その旋律は、とことんまで冷静さを保ちつつも、覆い切れぬほどの熾烈さが見え隠れしている。曲の終盤、物語の終幕、人生の終焉に向けて、苛烈な盛り上がりを魅せつけてくれる一曲である。

溜めに溜めた挙句、曲の後半で新たなトラックを挿入するというのは良いですね。