イエティがおくるSFサスペンスADV・ルートダブルより、
佐藤拓馬作曲、『The Brave Decision』。終盤のイベントで流れます。
科学研究施設にて発生した事故により、内部に閉じ込められた9人の男女が、刻一刻と放射能で汚染される状況下で脱出を目指すという内容の本作。記憶喪失のレスキュー隊長・渡瀬と、本来救助対象であるはずの少年・夏彦の二人を主人公に、両方の視点から謎を解明していくことになる。謎が謎を呼ぶスリリングなシナリオ展開に、緻密に掘り下げられたキャラクターごとの心情描写や相関関係、エニアグラムを用いた独特な分岐システムなど、意欲的な要素を織り交ぜつつ、全体としては堅実な仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは佐藤拓馬氏。主にドラマなどの劇伴制作を務める作曲家兼ピアニストである。本作は2030年の世界を舞台としていて、テレパシー技術が科学的に確立されているなど、SFらしい設定がいくつか存在するが、あくまでそれらは現実の延長線として扱われているため、浮世離れしすぎない形で、ピアノを主軸としたしたたかな楽曲が揃っている。サウンドトラックは初回限定版の特典として、本編の劇中劇を収録したドラマCDとともに同梱されている。
物語終盤、主人公たちの思いが複雑に交錯するクライマックスシーンで流れるのがこの曲である。ピアノソロのイントロから始まり、静謐さのなかに決意を滲ませたその旋律は、15秒からドラムとシンセパートが追加されることで力強さを蓄えていく。さらに30秒からはストリングスへと主旋律のバトンを渡すことにより、勇ましさに磨きをかけていき、オクターブをあげてもう一回サビを奏で直す。ピアノの間奏を挟んで再びストリングスが最高の盛り上がりを見せると、ようやく大団円を迎える。クライマックスにふさわしいテンションとカタルシスを兼ね備えた一曲である。
ルートダブルといえばこの曲、というくらい印象に残りやすい場面で象徴的に使われていますね。