坂本英城作曲、『春の風、鳴らない鈴』。
『春の風』と『鳴らない鈴』を組み合わせたもので、
ボーナスシナリオのスタッフロールで流れます。
街~運命の交差点~の流れを汲むサウンドノベルとして登場した本作。渋谷を舞台に、そこで起きた一つの誘拐事件を巡って、立場の異なる五人の主人公たちが奔走することになる。刑事や研究者、記憶喪失のネコの着ぐるみなど、主人公一人ひとりの決断が運命をいかようにも変えてしまう連鎖型の本格的なサスペンスである。街同様、実写を使用している点が特徴で、非常に読み応えのあるシナリオと相まってドラマや映画さながらの臨場感と没入感を持ち合わせている。本編のほかにも条件を満たすことで解禁されるボーナスシナリオやスペシャルエピソードなどが収録されていて、多種多様な物語を楽しむことができる奥深い仕上がりとなっている。後にPS3、PS4、PSP、スマホ、PCなどに移植された。
本作の音楽を担当するのは坂本英樹氏、佐藤直紀氏、保本真吾氏の三名。坂本氏はノイジークローク所属の作曲家で、ゲーム音楽を手広く手がけているが、佐藤氏はドラマや映画、アニメなどの劇伴作曲を中心に活動している作曲家である。保本氏は以前はゲーム音楽に携わっていたが、現在はJ-POPの方面でサウンドプロデュースを担当することの多い作曲家である。本作では実写のサウンドノベルというコンセプトにあわせて、ゲームサウンドというよりはむしろ劇伴に近い雰囲気の楽曲が揃っていて、豊かなオーケストラサウンドが主人公たちの数奇な運命を彩ってくれる。なお、保本氏は二つあるボーナスシナリオのうち、黒い栞のカナン編の作曲のみを担当している。サウンドトラックは主題歌を除き収録されている。
ボーナスシナリオの片割れである白い栞の鈴音編のスタッフロールで流れるのがこの曲である。病院暮らしの少年少女が紡ぐ、甘く切なく重いラブストーリーの最後を締めくくるにあたって、この曲では作中のイベントシーンで用いられる『春の風』と『鳴らない鈴』の両方を組み合わせている。ピアノとアコースティックギターが柔らかなハーモニーを奏でる『春の風』、ピアノ独奏による『鳴らない鈴』、それぞれの特徴を引き継ぎつつ、新たにバイオリンの甘美な音色を加えることで、伸びやかでしなやかな魅力が増している。それでいてどこか胸を締め付けられる哀愁を感じさせる。優しくて温かくてすこし物悲しくもある、命の尊さを実感させるような一曲である。
『春の風』と『鳴らない鈴』、いずれも坂本さんの作曲です。あわせてどうぞ。