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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#769 『胸の撃鉄起こす時』(上松範康/ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード/PS2)

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ディアビジョンがおくるRPGワイルドアームズより、

上松範康作曲、5の『胸の撃鉄起こす時』。通常戦闘で流れます。

荒野と口笛のRPGワイルドアームズシリーズのうち、ナンバリング5作目として登場した本作。高度な科学文明の残骸が残る惑星・ファルガイアを舞台に、ロストテクノロジーの結晶であるゴーレムに憧れを抱く少年・ディーンは、空から降ってきた記憶喪失の女性・アヴリルが口にした謎のことば「ジョニー・アップルシード」を頼りに、その正体を探る旅に出かける。前作で一旦廃止されたフィールドマップが復活、戦闘システムは前作を概ね踏襲しつつ、移動と行動が同一ターン内で可能になるなど、バトルテンポと戦略性が向上し、正統に進化している。シナリオについては、ライターの変更に伴い今までとはだいぶ毛色が違うもので、シリーズ10周年記念作でありながらやや異色な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは上松範康氏と甲田雅人氏。上松氏は音楽制作会社Elements Gardenの代表で、甲田氏は当時フリーランスの作曲家だった。このうち甲田氏は前作でも作曲経験があり、シリーズ恒例のなるけみちこ氏が不参加(なるけ氏がWAシリーズで携わっていないのは現時点で本作のみ)であるなか、二人体制でおなじみの口笛を主軸に据えた新生WAサウンドを生み出している。サウンドトラックはVol.1とVol.2で分かれて発売されていて、水樹奈々氏が歌い上げる主題歌も含めて100を超える楽曲が合計6枚組に収録されている。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。フラメンコ風の歯切れの良いギターとフィドルが織り成すスピーディーなイントロから始まり、カスタネットを思わせる軽快なビートが、次いでやってくる口笛の主旋律を華やかに彩る。派手なオーケストラヒットを連発しながら勢いを蓄えていくが、1分40秒あたりからは一転、しっとりとしたメロディーが奏でられ、伴奏の激しさとは対照的な静けさと切なさを口笛が紡いでいく。西部劇らしい渋さ満点の力強さを誇りつつも、それと同時に堪え難い哀愁をも漂わせた一曲である。

曲名のセンスも素敵ですね。ちなみにゲーム開始直後、ARM入手前はオフボーカルならぬ口笛抜きのバージョンが流れますが、主旋律がない状態での物足りなさと、それでもなお損なわれることのない伴奏の迫力とを一挙に味わえるので、聴き比べてみるのも面白いです。『胸の撃鉄起こす時 (ver. shovel)』、あわせてどうぞ。

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