アージェントがおくる料理アクション・俺の料理より、
Thousand sketcheS(大久保孝之・藤木和人)作曲、『あなたとムエタイ』。
多国籍料理ETHNICで流れます。
PS用の本格料理アクションとして登場した本作。天才料理人である主人公は、地球がカエル軍団に支配されてまずい飯しか食べられなくなった状況を打破すべく、美味しい料理を振る舞って世界を救うことになる、もしくは主人公の才能を妬むカエルのコックが、主人公を陥れるために開催した偽の料理大会にて、料理対決を挑むことになる(前者がイージーモードのシナリオ、後者がノーマル以上のシナリオ)。店で客に料理を提供するのが主な仕事で、デュアルショックのアナログスティックを包丁などの調理器具に見立てて、直感的な操作で材料を切ったり混ぜたり煮込んだりして、客のオーダーを素早くこなしていく。時々食い逃げやよっぱらいが出現することがあり、店の評価を維持しながら適切に対応していく必要がある。ものすごくシュールな世界観と、なかなか歯応えのある調理システムとが相まって、独特なセンスを持つ仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのはThousand sketcheS(大久保孝之氏と藤木和人氏)、石塚まみ氏、鈴木昌氏、苫米地義久氏。Thousand sketcheSはJ-POPなどの分野を中心に活躍する音楽ユニットで、石塚氏はピアニスト兼ボーカリスト、鈴木氏はフュージョン系のバンド・BeatNutsのギタリスト、苫米地氏はサックス奏者、いずれも本作以前にゲーム音楽とはほとんど関わりを持たない気鋭のアーティスト揃いである。大衆食堂や宇宙人が営む屋台、超一流の高級ホテルまで、本作で登場するバラエティ豊かな料理店のイメージに寄り添うような、和・洋・中なんでもござれのサウンドが用意されていて、特に各ステージの最後を飾るボス戦では、ステージ曲のテクノ調のアレンジが施される仕組みとなっている。サウンドトラックには短いジングルも含めて収録されている。
三番目に訪れる多国籍料理ETHNICの店内で流れるのがこの曲である。多国籍というだけあって、中華のエビチリや和食の納豆定食など、店名に違わぬエスニックなメニューが取り揃えられているが、この曲もそうした独創的な雰囲気にあわせて、いかにもオリエンタルなアンビアンスを醸している。バグパイプかトゥルムと思しき音色を中心に奏でられる、賑やかで騒がしくて、けれど決して耳障りには感じられない絶妙な喧噪が魅力で、ただ聴くだけで(といって、実際は調理に忙しくてじっくり耳を傾ける暇があるとは限らない)異国を旅する気分にどっぷり浸らせてくれる。ボス戦では異国情緒を残しつつ疾走感を重視したスピーディーなアレンジがかかり、料理対決を大いに盛り上げる。
ムエタイというとタイの国技ですが、タイ料理は特に登場しません。おそらく語感が良いから曲名に採用したのでしょう。ボス戦『踊る!あなたとムエタイ』(踊るのか格闘するのか分からなくなりそうですが、ボス戦の曲名はこれに限らずすべて『踊る!』という前置きが付きます)もあわせてどうぞ。