Glass Heart Studioがおくる横スクロールアクション・Vigil: The Longest Nightより、
Jouni Valjakka作曲、『Shallow Graves』。墓地と地下墓地で流れます。
台湾のインディーゲームスタジオ・Glass Heart Studioの代表作にあたる本作。異形が跋扈する明けない夜の世界を舞台に、夜警の女戦士・レイラは久々に帰ってきた故郷で起こる奇妙な失踪事件や疫病に立ち向かうことになる。全編にわたって暗澹としたホラーテイストのダークファンタジー調で彩られた2Dメトロイドヴァニアで、晦渋で陰鬱な世界観に見合ったハードな難易度を特徴とする。戦闘は攻撃や回避など各行動にスタミナを消費するスタミナ管理型、いわゆるソウルライクに近いアクション性を軸としていて、装備の充実具合やスキルポイントの割り振りなどのビルド要素とも相まって相応の歯応えがある。一方で難易度選択が可能で、死亡時は単純なセーブポイントからのやり直しで回収の駆け引きは存在しないため、遊び方次第でゲームバランスに多少の幅がある。全体的にマップが広く探索の自由度が高く、条件が曖昧で説明不足なきらいもあるが、サブクエストやストーリー分岐などが細々と仕込まれている。やり込みプレイはもちろんのこと、純粋に一周するだけでもボリュームが確保されている。総じて重みのある意欲作に仕上がっている。
本作の音楽を担当するのはJouni Valjakka氏。フィンランド出身の作曲家で、メタルバンド・Whisperedのギター兼ボーカル担当である。WhisperedはTrue Finnish Samurai Metalと銘打つ通り、日本文化や伝統芸能に強くインスパイアされた和風メロディックデスメタルを作風としている。Valjakka氏はバンド活動の傍ら、インディーゲームを中心に楽曲提供している。本作ではオーケストラやコーラスを巧みに用いて、闇に沈むようなメランコリックでメロウなサウンドを生み出している。ギターやフィドルの扱い方がどこか民族風の色味を帯びているほか、高音と重低音の対比や歪みの利いた音色が不気味な気配を漂わせている。サウンドトラックはSteamのDLCや各種デジタルサイトで配信されている。
墓地と地下墓地で流れるのがこの曲である。隣接するエリアでいずれも比較的序盤に立ち入ることができる。冒頭から凄まじく悲哀に満ちたストリングスが奏でられ、13秒からリュートを思わせる繊細な音色を添えて美しくも痛ましげな印象を与える。低音域から徐々に高音域に上っていき、やがて感傷が極まると39秒からシャラシャラと掻き鳴らして勢いを発散する。しばらくストリングスは高音を軸として伴奏に回るが、ややあって1分4秒頃から再び主旋律を担うようになると、冒頭でみられた静寂のなかの悲哀とは一味異なる、激動のなかの悲哀を感じさせる。1分17秒以降、ピアノやリュート、次第にクラリネットのような管の音色を交えて表現力たっぷりに盛り上げていく。2分前後にもなると各楽器の音色が見事に寄り合い、絡み合い、捻じれ合って狂気的な精彩をみせる。2分8秒を過ぎるとストリングスが異様に重く威厳を放ちながら収束に向かい、最後は余韻を湛えながら締める。不思議と揺り動かされるような気迫を持つ一曲である。
素敵な悲愴感ですね。