VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1664 『Outside the Castle Walls』(potatoTeto/Pseudoregalia/PC)

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rittzlerがおくる3Dプラットフォーマー・Pseudoregaliaより、

potatoTeto作曲、『Outside the Castle Walls』。Empty Baileyで流れます。

主にPCやブラウザ向けにプラットフォームアクションを制作しているインディーゲームクリエイター・rittzler氏の代表作にあたる本作。ヤギとウサギとネコの見た目を併せ持つ女獣人・Sybilは、引きずり込まれるようにやってきた夢の中の歪んだ城を探索することになる。90年代後半、初代PSやニンテンドウ64を彷彿とさせるローポリゴングラフィックが特徴的な3Dメトロイドヴァニア系のプラットフォーマーである。戦闘よりも探索に重きを置いていて、入り組んだステージを巡って様々な技能やパワーアップを開放し、新たなアクションを活用して道を切り拓いていく。スライディングやしがみつき、壁キックなど多彩かつアクロバティックな動作が用意されていて、単純な一方通行ではなく自分なりにショートカットや意外なルートを見つけ出す攻略の自由度が担保されている。戦闘はトンファー風の武器を用いた近距離戦がメインだが、武器を投げたり斬撃を放ったりする要素もある。全体的にクラシカルな遊び心地で非常にレスポンスが良く、ジャンプやダッシュの滑らかさとスピード感が魅力的である。総じて手頃で軽快な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはpotatoTeto氏、stillCrisp氏、+w+氏。potatoTeto氏はアメリカ出身の作曲家で、主にサブカルチャー寄りの同人系のアレンジや楽曲提供の分野で活動している。本作ではメインコンポーザーとサウンドデザインを務めている。stillCrisp氏はcrisp名義でも知られるアイルランド出身のミュージシャンで、インディーゲームへの楽曲提供やソロ活動をおこなっている。+w+氏はアメリカ出身のマルチクリエイターで、本作は作曲での参加だが個人でゲーム開発等も手がけている。本作では幻想的で不穏な城の雰囲気に合うように、シックなアンビアンスとノスタルジーに満ちたシンセやオーケストラサウンドが揃っている。レトロとまではいかないが90年代後半のオールドスクール感があり、ときに心地良く、ときに昂揚感たっぷりに聴き浸ることができる。サウンドトラックはSteamのDLCやBandcamp経由で配信されている。

Empty Baileyで流れるのがこの曲である。メインマップのCastle Sansaに直結する小さな外壁エリアで、鐘塔などの建造物や足場が多いが比較的簡素なつくりである。屋外ではあるが依然として歪な夢の中に囚われたまま、謎めいた閉鎖感のある場所を彩るにあたって、冒頭から意味深な響きを帯びたピアノが象徴的に奏でられる。13秒あたりでシリアスなシンセストリングスと牽引力のあるビートが加わると、寂寥感とともに疾走感が色濃く漂うようになる。しばらく反復して溜め続けたあと、41秒でピアノとクワイアを重ね合わせながら主旋律を紡ぐと、不思議と胸に込み上げてくるものがあるような味わい深さを感じさせる。1分8秒にはほとんど前触れもなく急にレトロな音色を鳴らし始めて脳に訴えかけてくるインパクトを生み、1分36秒には電子音を背にストリングスが朗々と響き渡ることで鮮やかな精彩を放つ。ストリングスのフレーズが終わる2分3秒から今度はピアノと電子音の見せ場が待ち構え、曲終盤からループに向けて力強い演奏を披露し、やがて2分17秒で冒頭に戻って緩やかに再始動する。アンニュイだがガツンと来る一曲である。

外壁っていいですよね。概念というかシチュエーションが語らずとも物語性がある気がするんです。天国の塔の『Luna Ascension』あたりを連想します。

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