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#1042 『Living Forest (Original Version)』(Álvaro Lafuente/Nihilumbra/iOS)

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BeautiFun Gamesがおくるアクションパズル・Nihilumbraより、

Álvaro Lafuente作曲、『Living Forest (Original Version)』。

Living Forest(命の森林)で流れます。

スペインのインディーゲームスタジオ・BeautiFun Gamesのデビュー作にあたる本作。虚無から生まれた主人公は、暗黒の虚無から逃れるために色の力を借りて逃避行を始めることになる。水色なら地面を滑りやすくして速く進めるようになる、赤色なら対象を燃やすなど、色に応じた能力を使い分けながら横スクロール型のステージを攻略していく。通常のストーリーモードでは当初は使える色が限られるが、徐々に増えていく仕組みで、クリア後に解禁されるVoidモードでは色は自由に使えるものの、難易度が容赦なく跳ね上がる。全体的に寂寥感漂う世界観が特徴で、ナレーションがときに哲学的に、ときに辛辣な語り口で、主人公の旅路を彩る。クリア前はさくっとカジュアルに、クリア後は歯応え抜群のパズルに挑戦できる仕上がりとなっている。後にSteamやPS Vita、WiiU、スイッチ、Androidに移植された。

本作の音楽を担当するのはÁlvaro Lafuente氏。移植版はスペインの音楽制作会社Furius Musicがリマスターした別音源が使用されている(Furius Music自体は原作から携わっている)。Lafuente氏については、情報がすくなく素性が判然としないが、当時Furius Musicに所属していた可能性がある作曲家である。本作のダークでアンニュイな雰囲気を表現するにあたって、ピアノなどの柔らかい音色を使った楽曲はもちろん、重厚で威圧的なオーケストラサウンドも揃っている。サウンドトラックは原作・リマスター音源の双方が収録されたうえで未使用曲も含まれる。

5つあるワールドのうち、2番目に訪れるLiving Forest(命の森林)で流れるのがこの曲である。ここでは緑色の力を得ることができ、床に塗ることで弾力性が生まれる(主人公含め接触した物体が跳ねるようになる)。鬱蒼とした薄暗い森を彩るにあたって、しっとりとしたハープとピアノの音色、それに低音のストリングスが神秘的な合奏を奏でる。27秒以降はストリングスが甲高い旋律を紡ぐようになり、メランコリックなハープ共々、今にも張り裂けそうな悲愴感を醸し出す。あえて全編にわたって擦ったようなノイズ交じりのローファイな音色を取り入れることで、いっそう哀愁がかった没入感を生む。重く、美しく、すこし恐ろしくさえ感じられる一曲である。

原曲はハープとストリングスが主役という感じですが、リマスター音源だとピアノが強調されているのと、ノイズ成分が減っています。『Living Forest』、あわせてどうぞ。

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